／３ ページ43
ｼｮｳくんが何かを言いかけて、口を閉ざした。
俺は、自分の携帯をジーパンの後ろポケットから取り出す。
掛けて来ているのはﾆﾉだった。
「ちょっと待って、ﾆﾉからかだ…」
通話 ボタンを押すと、
『…やあ、ｵｵﾉさん。…今ね…元気？』
いつものように、ちょっとふざけた口調が、でも幾分かトーンを落として聞こえた。
「元気だよ…。何だよ」
『…俺さ…。分かっちゃったことがあってさ…。これはきっと…一番にあなたに伝えなきゃいけないことなんだと思って…』
嫌なことが起こる予感が、鳩尾の辺りをぐっと押し込む。
だって、ﾆﾉの声は。いつも冷静なﾆﾉの声が、気持ちの昂ぶりを押さえる為に、少し掠れていた。
『…ｼｮｳさんのこと…なんだけど。…あのね…』
ゆっくりと、ｼｮｳくんを見ると、ｼｮｳくんはなんのこと？と首を捻った。
『…俺、余計な事したんだよ。…ｼｮｳさんとこの前、『この薬のどこが自分に効いているのか？』って話して一錠俺にくれたんだ。…俺…それを薬学行ってる知り合いに、何の薬か調べてもらったの。…だって、ｼｮｳさんずっと呑んでるじゃん、それ。…俺には、ｵｵﾉさんとの関係が、体が受け付けられなくなったって言ったけど、それじゃ、別れても何でずっと薬呑んでんの？原因が消えたら、いらないじゃん』
―――ｻﾄｼくんを見てると、頭が痛くなる。
それが、一番大きな理由なんだと思った。
裏切ってしまった俺に対しての、拒否反応。
でも、理由はそれだけではなかったのか？
『…今日、返事くれたんだよ。調べた結果の。……あのね…』
携帯の向こうで、迷っているﾆﾉの姿が、目に浮かぶ。
一つ一つ打ち付ける鼓動が、慟哭のように、体中に響いた。
『……ｼｮｳさんが、呑んでるの…。抗癌剤だ』
その言葉の意味が頭で理解される前に、目の奥が一瞬で熱くなった。
耳に当てていた携帯を持つ手に力が入らなくて、右手と一緒にぶらりと下がった携帯は、そのまま床に滑り落ちてに転がった。
冷たくなった指先で、あの時目に留まったゴミ箱にある白い紙袋を取り上げる。
その中には、まだぎっしりと錠剤が詰まっていた。
表に側に表記された名前には、この辺りでは屈指言われる、癌専門の医療機関がプリントされていた。
「…ｼｮｳくんは、どうしたの？」
皺くちゃになったその袋を逆さにすると、まだ切り離されていない薬が、束になって落ちた。
ラッキーアイテム
革ベルト
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 70人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
wakano(プロフ) - あおみさん» ドキドキ私もしてます。どうなるんだろう？（笑）大まかには決めてるんですが、一つだけ。死人は出ません！ (2012年9月13日 12時) (
レス) id: 079ef5676a (このIDを非表示/違反報告)
あおみ(プロフ) - そんな…サトシくんはどうなっちゃうんですか！次回の更新を震えて待ちます。ドキドキします… (2012年9月13日 1時) (レス) id: e8e0a50d24 (このIDを非表示/違反報告)
wakano(プロフ) - あおみさん» のんびりと書いていたので、凄く辛い時期が長かったですよね（笑）大変お待たせいたしました。まだもう少しお話自体は続きますが、二人の気持ちが伝わりあうのはもう目の前です！頑張りま〜す！ (2012年9月8日 11時) (レス) id: 079ef5676a (このIDを非表示/違反報告)
あおみ(プロフ) - アップ直後から何度も読み返し、ジュンくんとサトシくんとショウくんそれぞれの心を思って切なく、また温かな気持ちになります。素敵なお話、ありがとうございます！毎回毎回涙を堪えるのが辛いので外では読まないようにしてました。続き、震えて待ちます！ (2012年9月8日 8時) (レス) id: e8e0a50d24 (このIDを非表示/違反報告)
wakano(プロフ) - ＊華＊さん» やっと意志の疎通が出来そうなとこまで来ました。ここまできたら一気書きでしょう！『はろまい』返上で書き上げます！一話ずつ出来次第アップするので、お暇だったら覗いてみてください（ぺこり） (2012年9月8日 8時) (レス) id: 079ef5676a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：wakano | 作者ホームページ：http://wakano.blog.fc2.com/
作成日時：2012年7月12日 12時
