エピローグ２ ページ11
「あんた、まだスーツぺらぺらだね」
ネクタイを締めている俺の横で、ハンガーに掛かっているギャケットを摘まんで、懐かしそうに淳が言う。
「余計なお世話だよ。最近、画材とかにもいるようになったから、なかなか着てるもんにまで金かけられねんだよ」
壁に立て掛けてある何点かのボードに描いている人は、ほとんどが淳だ。
それを見つけた淳は、そっと取り上げて自分の目の高さに持ち上げ、じっと見つめた。
最初に書き上げた淳のポートレート。
紫のパステルを基調に色を重ねたその絵の中の淳は、まさに俺に笑いかけていた表情そのものだった。
「…俺って、こんな顔してんの？初めて知った…」
「…淳はいつもそんな顔で俺のこと見てるよ」
「すんげーデレデレした顔してんじゃん。なんか…照れるわ」
「しょうがないじゃん、俺のこと好きなんだから」
俺がそう言うと、鼻先がきゅっと摘ままれた。
「イテーよ！」
「なんか腹立つな。その通りだけど」
俺を覗き込みながら、軽く重ねられた唇から、懐かしいタバコのにおいがする。
ゆっくりと引き寄せられたまま淳の胸に頭を沿わす。
「……本当は物凄く感動してる。あんたが描く俺が優しすぎて。なんかさ…凄く反省したんだ。長い間待たせすぎたんだって。本当にごめん」
「……約束はちゃんと守れたじゃん。ちゃんと帰ってきてくれたんだから、それでいいんだよ」
二度と会えない人を心に閉じ込め過ごしていた日々を、こじ開けてくれたのは淳だ。
もう一度会える約束を果たしてくれたのは、淳だ。
それだけでも俺には十分だ。
「……仕事の前に泣かすなよ…。俺、凄い目がはれちゃうんだから」
俺は滲んだ涙を、淳のシャツにわざと擦り込む。
淳はもっと強く俺を抱き寄せた。
・
・
「…佐久谷に、話しがあるって言われてるから、俺も今日は一緒に行くよ」
そう言いながら、通勤についてきた淳が、余りに周囲の視線を集めることに途中で気付き、なんだか気恥ずかしくなった。
いつもより幾分か緊張しながら会社の近くまで来ると、後ろから肩をぽんと叩かれる。
「…はよ、青野さん…と、え？淳くん！？」
「お久しぶり」
「本当、久しぶり。いや、結構話は聞いたりしてるよ、この人からさ」
シノは遠慮なく俺を指差してみせる。
「俺のことは聞いてる？」
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wakano(プロフ) - はじめまして、あすかさん！一年以上昔のしかも、長編といえるお話を書ききったのはこれが初めて、というしろもんですが、読んでいただけて、大変嬉しいです。これは、シリーズ化して、中篇くらいのお話がぼちぼちとあります。まだ、続く予定です！ (2013年10月11日 23時) (
レス) id: 079ef5676a (このIDを非表示/違反報告)
あすか(プロフ) - 始めまして。熱で一日中倒れていたのですが、このお話に出会って一日かけて全部読んでしまいました。とても素敵なお話で、OさんとMさん、そしてSさんの心理の描かれ方がとても素晴らしいと思いました。何度か涙しながら読ませて頂きました。感動しました！！(*^o^*) (2013年10月10日 2時) (レス) id: 25cb458627 (このIDを非表示/違反報告)
wakano(プロフ) - 本当に完結ですよ〜！自分でも初めての長編完結で、なんとも言えない気持ちです。いつも応援してくださって、ありがとうございました！新し物をどうするか考え中ですが、また宜しくお願いします！ (2012年4月2日 6時) (レス) id: f6be20403f (このIDを非表示/違反報告)
あきの - wakanoさん、とうとう完結しましたね〜！おめでとうございます、そしてありがとうございます！本当に素敵なお話でした、幸せな時間をいただきました。淋しいけど、これからもこの２人に光が降り注いでいくのが分かるエンディングで嬉しくなりました。お疲れ様でした！ (2012年4月2日 1時) (携帯から) (レス) id: e942779ebe (このIDを非表示/違反報告)
wakano(プロフ) - ＊華＊さん» 華さんのコメントにどれだけ励まされたか！どうにかこうにか書き上げることが出来て、ほっとしています。本当にありがとうございました！ラストのシーンは最初から決めていたので、お話し自体も、被らせる様に今日頑張ってしまいました！ (2012年4月2日 0時) (レス) id: f6be20403f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：wakano | 作者ホームページ：http://wakano.blog.fc2.com/
作成日時：2012年3月21日 23時
