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「ばっか!」
旭のあごを掴み、ぐいーと巻きついた腕ごと引き離す。
その間も俺の頬は、カッカカッカと火照りまくる。
「…朝飯のことなんですけど、何か?」
俺の反応を面白がっているのが見え見え。
「早く、その辺の残り物食っちまえよ!」
折角、機嫌よく皿洗いしてたのに。
旭にくるりと背中を向け、シンクの中のスポンジを手にする。
なんか、もう、気持ちのアップダウンがありすぎて、ずっとド○○キしっぱなしなんだよ。
「……お前、ツンデレすぎる」
ふーと、大きく息を吐く。
「何?」
「何でもねぇ!」
前は、しょっちゅう厳し過ぎる眼光浴びてたんだぞ。
今は、何なんだよ?
そのベタ甘具合、ギャップありすぎだろ!!
顔と言うか、頭全体というか、とにかく絶対に、血圧と心臓には、ここ数日負担掛けすぎてる。
「病院で、検査して貰おうかな…」
そう呟くと。
「どうした?調子でも悪い?」
と、真顔がまた横から覗き込むから。
「近い近い。なんでもない!」
俺はゴム手のまま、旭の頬を押し返した。
「ちょ…なにすんだよ。洗剤目に入るじゃん!」
ごしごしと擦る拳に、
「大丈夫、大丈夫」
と、ご機嫌に笑い掛ける。
仕返し成功!
旭はふんとした顔をしながら、ついっと体を屈め、俺の耳に直接入ってくるような距離で。
「じゃあ、デートはOKな。俺、客室かたしてくるから」
そして、物のついでのように、うなじにもう一発キスを落とした。
「…もう」
俺は、来ているシャツが濡れるのも気にせず、ゴム手でその辺りを掠めた。
そして、客室に向かう後姿に、
「指、気をつけろよ!」
と声を掛けた。
旭の小指は、もうがっちりとした保護するような添え木はなく(最初から、つけたり外したりだったけど)、今は、テーピングのみになっている。
ここに来て、やっと着きはじめた骨が、ぽきん、なんてことになったら、元も子もない。
「ばっちし、大丈夫!」
こっちも間違いなく上機嫌の声が返ってきた。
それからちょっとだけ遅れて、
「…今日、親に紹介すっから、改めて」
もう少し離れた、聞こえるぎりぎりの距離から発信された、メッセージが俺に届く。
「はあ!?」
慌てて振り向いても、もうその姿は当然のようになくって。
残された俺を呆然とさせた。
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wakano(プロフ) - *華*さん» なんだか、これだけ細かく書いてると、最後までいくのに何ページ使うの?って思うんですが、きっと旭も丁寧にやろうとするだろうし、誠は、『わっきゃっ』うるさいだろうし、と思うと、なかなか進みません(汗)何より、ちょっと楽しくなってきた(笑) (2014年10月2日 22時) (レス) id: 660e647bc0 (このIDを非表示/違反報告)
*華*(プロフ) - 脱ぐってまこっちゃん男らしいね!(笑)でもそこでリードを渡さない旭も男らしい。ふたりの相手を想う気持ちと初々しさにニヤニヤしちゃいます。 (2014年10月2日 10時) (レス) id: 05fe7ce0c3 (このIDを非表示/違反報告)
wakano(プロフ) - *華*さん» 旭の母ちゃん、とっても書き易いいい人です(笑) 苦労人なんですが、それ故さっぱりしていてかっこいい。味方でよかったねという感じです。ここの場面はラストに持ってこようかどうしようかと迷いましたが、残された時間に気がつきどうするべきか考える誠を書きました (2014年9月28日 19時) (レス) id: 660e647bc0 (このIDを非表示/違反報告)
*華*(プロフ) - 怒涛の更新お疲れ様です☆思わず旭母ちゃん初対面のときを読み返しちゃいました(о´∀`о)誠からそんなこと伝えるなんて、何だか感慨深いです♪(気分はすっかり親戚のオバチャン化した応援団)旭の二人の未来を見据えての落ち着きが嬉しいです(*´∀`)♪二人共頑張れ~ (2014年9月26日 11時) (レス) id: 18f431e9cb (このIDを非表示/違反報告)
wakano(プロフ) - 天羽さん» はい、いよいよです。長かったわ〜(笑)こんなにお初に時間が掛かったのは初めてです。まあ、最初はキス止まりの話にしようと思ってたので、こういうことになってしまったんですが。話としては一ヶ月少々のお話ですが、私の積もり積もったものをぶつけたいと思います。 (2014年9月26日 6時) (レス) id: 660e647bc0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:wakano | 作者ホームページ:http://wakano.blog.fc2.com/
作成日時:2014年5月25日 21時