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濡れた髪を、タオルでごしごしと擦りながら、ドアを開けると、いつものように敷かれた俺の布団の横に、隙間なくもう一枚、布団が敷かれていて、俺を戸口で呆然とさせた。

「…旭…。なんかこれ…恥ずかしい…」

布団に座り枕を抱えている旭が、妙にミスマッチで可愛いけど。

「なんで?」

「なんでって…お前、ベッドあるだろが。下心みえみえじゃん…。俺、引く」

「…なんにもしないって言ったら、嘘になっちゃうかもだけど、今日は、さっきので充分、満腹」

「じゃあ…」

「ベッドで寝たら、手繋げない」

すっと差し出された手が、胸の奥をぎゅっと握り締める。

その指先を、絡めるように受けとって、その隣に座り込んだ。

「なんか…熱い…」

空いたほうの手でパタパタと、顔を仰ぎながら扇風機のボタンを『強』に切り替えた。

今までは同じ部屋に寝泊りっていっても、横になるとお互いの姿は見えなくて。

せいぜい、寝息とイビキが聞こえる程度だったけど。

「そんじゃ、明日の朝も5時起きで宜しくお願いします」

旭が手許にあるリモコンで、灯りを消すと、目線が同じ俺たちは、二人で並んだまま横たわった。

真ん中で繋がれた手。

伝わってくる温度。

「……なんか、安心する」

「…うん」

「旭が、こうやって手繋いでくるの、俺ね、最初から違和感なかったよ」

「うん」

「普通だったらさ、男と手なんか繋ぐのいやじゃん。しかも結構人目のあるとこでもしてたし」

「……だって、狙ってやってたもん」

「え?」

「他のやつに、目なんかつけられたらやだから。それに、あの誠が家出した大雨の時も、渉が誠に絡むのが面白くなくて、八つ当たりした。俺って自分でも気が付いてなかったけど、すげーガキだよ」

「旭って本当は、泣き虫で、寂しがり屋で、手が早くって、ガキなんだ」

俺がそう言うと、

「…全部、誠がいなかったら、分かんなかった」

旭は笑いながら、俺の頬をぐーと引っ張った。

「…俺もこんな俺、知らなかった」

そして、俺の額に自分の額をくっつけた。

「誠がいてよかった」

鼻の頭にちょん、と旭の唇が触れる。

「それじゃ、寝ようか」

ごろりと体を転がして、旭は俺の隣で天井を見上げた。

俺はといえば、鼻チューで心臓が加速してしまい、一気に勢い良く血流が廻り始め、目がパッチリと開いたまんまだ。

少しずつ呼吸が浅くなっていく旭のリズムと、窓から差し込む夜の、薄い明かりに浮かび上がる睫の長さを、なんとなく眺めていた。

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wakano(プロフ) - *華*さん» なんだか、これだけ細かく書いてると、最後までいくのに何ページ使うの?って思うんですが、きっと旭も丁寧にやろうとするだろうし、誠は、『わっきゃっ』うるさいだろうし、と思うと、なかなか進みません(汗)何より、ちょっと楽しくなってきた(笑) (2014年10月2日 22時) (レス) id: 660e647bc0 (このIDを非表示/違反報告)
*華*(プロフ) - 脱ぐってまこっちゃん男らしいね!(笑)でもそこでリードを渡さない旭も男らしい。ふたりの相手を想う気持ちと初々しさにニヤニヤしちゃいます。 (2014年10月2日 10時) (レス) id: 05fe7ce0c3 (このIDを非表示/違反報告)
wakano(プロフ) - *華*さん» 旭の母ちゃん、とっても書き易いいい人です(笑) 苦労人なんですが、それ故さっぱりしていてかっこいい。味方でよかったねという感じです。ここの場面はラストに持ってこようかどうしようかと迷いましたが、残された時間に気がつきどうするべきか考える誠を書きました (2014年9月28日 19時) (レス) id: 660e647bc0 (このIDを非表示/違反報告)
*華*(プロフ) - 怒涛の更新お疲れ様です☆思わず旭母ちゃん初対面のときを読み返しちゃいました(о´∀`о)誠からそんなこと伝えるなんて、何だか感慨深いです♪(気分はすっかり親戚のオバチャン化した応援団)旭の二人の未来を見据えての落ち着きが嬉しいです(*´∀`)♪二人共頑張れ~ (2014年9月26日 11時) (レス) id: 18f431e9cb (このIDを非表示/違反報告)
wakano(プロフ) - 天羽さん» はい、いよいよです。長かったわ〜(笑)こんなにお初に時間が掛かったのは初めてです。まあ、最初はキス止まりの話にしようと思ってたので、こういうことになってしまったんですが。話としては一ヶ月少々のお話ですが、私の積もり積もったものをぶつけたいと思います。 (2014年9月26日 6時) (レス) id: 660e647bc0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:wakano | 作者ホームページ:http://wakano.blog.fc2.com/  
作成日時:2014年5月25日 21時

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