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「…大丈夫。もう、喧嘩はしてないんだ」
ちゃんと、自分の気持ちは伝えられた。
後ろを振り返れば、後悔することは沢山あるけれど、俺が今出来ることは、やりつくした。
それでも、乗り越えたはずの涙が、不覚にも我慢を忘れ溢れ出そうになり、俺は慌てて握った拳で、ごしごしと目を擦り、それを事前に引き止めた。
「…あんちゃんも、わざわざありがとう。本当にお世話になりました」
「マジ、また来るんだぞ!待ってからな!」
俺は曖昧に笑ってそれを誤魔化し、ぺこんともう一度頭を下げた。
「それじゃ…」
「誠、元気でな!」
「…がんばれよ」
みんなから、掛けられる温かい言葉。
今までの人生で、一番熱く長かった夏だった。
それを実感させてくれる、色とりどりの人たち。
一つを思い出せば、次から次へと、映画のダイジェストのように、ここでの出来事が自動再生されていく。
そこに常に現われる、その視線が。
俺を追いかけてくれること願いながら。
「さよなら」
やっと言ったその言葉に、負けないように、俺は歩き出した。
船着場に行くと、そこには行きと同じように、こっちサイドのもぎりのおばちゃんがいて、俺の避難所として愛着のある、待合に座っている人に、切符を渡していた。
「誠、買う?」
奏がそれを見て、俺に訊いた。
「ううん、俺、持ってんの。来る時に往復買ってたんだ」
「そんなのあったんだ」
「知らなかった?」
「うん」
戻ることを前提にした切符の残り半分を、ポケットから取り出して眺めた。
結局、これは初めから決まっていた、運命だったのかもしれない。
俺は無意識に、それを決めていたのかな。
手の平にある、それを買ったときには、『どうせ帰るんだから』とか思ったような気がする。
何気なく、そう感じたことが、今はこんなにも苦い。
いっこ、いっこクリアしていく儀式が、俺を元いた下界に連れ戻そうとしている。
俺にとって、ここは天国みたいなものだったんだ。
待っている人の現われる気配は、未だにない。
時間は着実に進み、俺をその時に運ぼうとしている。
大好きになった海を直視できず、朝日荘への道も振り返られず、俺は足元ばかりを見ていた。
―――俺の言ったこと、伝わったよな。
なら、やっぱりこれが答えっていうわけなのかな。
諦めかけた心を追い討ちするように。
船のエンジン音が耳に届いた。
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wakano(プロフ) - *華*さん» なんだか、これだけ細かく書いてると、最後までいくのに何ページ使うの?って思うんですが、きっと旭も丁寧にやろうとするだろうし、誠は、『わっきゃっ』うるさいだろうし、と思うと、なかなか進みません(汗)何より、ちょっと楽しくなってきた(笑) (2014年10月2日 22時) (レス) id: 660e647bc0 (このIDを非表示/違反報告)
*華*(プロフ) - 脱ぐってまこっちゃん男らしいね!(笑)でもそこでリードを渡さない旭も男らしい。ふたりの相手を想う気持ちと初々しさにニヤニヤしちゃいます。 (2014年10月2日 10時) (レス) id: 05fe7ce0c3 (このIDを非表示/違反報告)
wakano(プロフ) - *華*さん» 旭の母ちゃん、とっても書き易いいい人です(笑) 苦労人なんですが、それ故さっぱりしていてかっこいい。味方でよかったねという感じです。ここの場面はラストに持ってこようかどうしようかと迷いましたが、残された時間に気がつきどうするべきか考える誠を書きました (2014年9月28日 19時) (レス) id: 660e647bc0 (このIDを非表示/違反報告)
*華*(プロフ) - 怒涛の更新お疲れ様です☆思わず旭母ちゃん初対面のときを読み返しちゃいました(о´∀`о)誠からそんなこと伝えるなんて、何だか感慨深いです♪(気分はすっかり親戚のオバチャン化した応援団)旭の二人の未来を見据えての落ち着きが嬉しいです(*´∀`)♪二人共頑張れ~ (2014年9月26日 11時) (レス) id: 18f431e9cb (このIDを非表示/違反報告)
wakano(プロフ) - 天羽さん» はい、いよいよです。長かったわ〜(笑)こんなにお初に時間が掛かったのは初めてです。まあ、最初はキス止まりの話にしようと思ってたので、こういうことになってしまったんですが。話としては一ヶ月少々のお話ですが、私の積もり積もったものをぶつけたいと思います。 (2014年9月26日 6時) (レス) id: 660e647bc0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:wakano | 作者ホームページ:http://wakano.blog.fc2.com/
作成日時:2014年5月25日 21時