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「本当にここでいいの?」
来た時と同じ、バッグ一つを傍らに置くと、先に表に出た奏を待たせた状態のまま、それでもゆっくりと靴を履いた。
いつも朝には登場しない芳と誠が、そんな俺の様子を奏と並んで見ていた。
「…旭、呼んで来ようか?」
芳が、落ち着いてしまっている俺を見て、そわそわしながら訊いてきた。
靴の踵を、後ろに指を突っ込んで、すぽっと入れ込む。
気持ちよく入ったそれに、ちょっとだけ気持ちが楽になる。
立ち上がると、3人の仲間になるべく並んだ。
ずっと、さっきから動悸は上がりっぱなしだった。
頭の芯も真っ直ぐに立っていることが、不思議なくらいにぐらぐらだ。
旭は今朝、一度も俺の前に姿を見せなかった。
「…いい。二人もいいよ。本当に。港まで見送りなんてしてもらったら、俺、号泣しちゃうから」
「そんな、水臭いこと言わないでよ〜」
「…お前が一番に泣いてどうすんだよ」
ぺちりと、渉が芳のおでこを平手で叩くと、芳は『スン』と鼻をすすった。
「…今まで、ありがとうな。長かったような、短かったような…でも、凄く俺にとって貴重な時間を貰いました。ありがとう…」
二人に向かって、ぺこりとお辞儀をする。
心の中で、旭にも一緒に頭を下げた。
『ありがとう』
何も残らなくても、この気持ちだけは、ずっと忘れたりしない。
旭の名とともに。
顔を見回すだけで、もう、それ以上に話したくても、何も言うことが出来なくて。
俺は、やっと。
「それじゃ、行くね」
と、視線を二人から、奏へと向けた。
「もう。いいの?」
「うん」
そう言った、俺の背中に軽く手を沿え、一歩踏み出したところへ。
「ちょっと、待ったー!!」
どすどすと建物の中から、大きな足音が響いたと思ったら、
「ほらよっ!」
玄関にある突っ掛けを引っ掛けながら、あんちゃんが俺に白い大きな布地のものを投げて寄こした。
広げてみると、それは俺がここに来てからずっと使っていた、エプロンだった。
「お前にやるよ。もう。それには誠の名前書いちゃったから、他のやつは使えねーだろ」
そう言って、俺の頭をがしがしとかき回した。
「…寂しくなっちゃうな。旭も朝から数え切れないくらい溜息ついてたぞ。仲直りできてないんだろ?そのまま、お終いになんか絶対するなよ。だめなら、もう一度帰って来い。そこから、やり直したらいいんだから」
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wakano(プロフ) - *華*さん» なんだか、これだけ細かく書いてると、最後までいくのに何ページ使うの?って思うんですが、きっと旭も丁寧にやろうとするだろうし、誠は、『わっきゃっ』うるさいだろうし、と思うと、なかなか進みません(汗)何より、ちょっと楽しくなってきた(笑) (2014年10月2日 22時) (レス) id: 660e647bc0 (このIDを非表示/違反報告)
*華*(プロフ) - 脱ぐってまこっちゃん男らしいね!(笑)でもそこでリードを渡さない旭も男らしい。ふたりの相手を想う気持ちと初々しさにニヤニヤしちゃいます。 (2014年10月2日 10時) (レス) id: 05fe7ce0c3 (このIDを非表示/違反報告)
wakano(プロフ) - *華*さん» 旭の母ちゃん、とっても書き易いいい人です(笑) 苦労人なんですが、それ故さっぱりしていてかっこいい。味方でよかったねという感じです。ここの場面はラストに持ってこようかどうしようかと迷いましたが、残された時間に気がつきどうするべきか考える誠を書きました (2014年9月28日 19時) (レス) id: 660e647bc0 (このIDを非表示/違反報告)
*華*(プロフ) - 怒涛の更新お疲れ様です☆思わず旭母ちゃん初対面のときを読み返しちゃいました(о´∀`о)誠からそんなこと伝えるなんて、何だか感慨深いです♪(気分はすっかり親戚のオバチャン化した応援団)旭の二人の未来を見据えての落ち着きが嬉しいです(*´∀`)♪二人共頑張れ~ (2014年9月26日 11時) (レス) id: 18f431e9cb (このIDを非表示/違反報告)
wakano(プロフ) - 天羽さん» はい、いよいよです。長かったわ〜(笑)こんなにお初に時間が掛かったのは初めてです。まあ、最初はキス止まりの話にしようと思ってたので、こういうことになってしまったんですが。話としては一ヶ月少々のお話ですが、私の積もり積もったものをぶつけたいと思います。 (2014年9月26日 6時) (レス) id: 660e647bc0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:wakano | 作者ホームページ:http://wakano.blog.fc2.com/
作成日時:2014年5月25日 21時