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「忘れるわけには、いかねーんだよ。俺がこれからやってく為の、それが新しいモチベーションになるんだ。絶対に、絶対に、忘れてやらない。お前が、ここにいて。俺のこと待っててくれるんだったら。それだけで、がむしゃらになれる…」

旭の指を自分で傷つけて、その償いを誓った時のように、俺の中身は熱いもので膨れ上がる。

「…俺ね、馬鹿みてーにしつこいの。取り柄なんだよ」

それが、俺の決めた結論。

ちっぽけな俺が、だめなら。

でっかくなるしかない。

ちゃんと、自分で自分の始末がつけられるように。

旭が、この宿を守っていくことを、誇りとして生きるなら。

俺が、そんな旭を、俺に縛り付けてやる。

「…だから、俺が頑張ってやるから。旭はこの島で、待っててくれればいいから…お願いだから、俺のこと忘れたりするな…」

旭が、諦めなければ、俺は大丈夫。

呆けたような表情で、俺を見ている旭に、勢いよく飛び込むように、抱きつく。

ぎゅっと抱きしめる、旭の硬いけれど、意外と薄い胸の厚み。

あっけに取られて、身動きすることさえ忘れている、その唇に自分のをぶち当てる。

全くの経験不足で、心臓が破裂するかと思うくらい、緊張が体を強張らせる。

だから余計に、勢いを殺せず、乱暴にぶつかりあったような感じになってしまった。

『キス』というより『事故』?に近い。

それでも、これが今の俺の精一杯だ。

「…それでもやっぱり無理って旭がおもうなら、しょうがない。…そんなでも、もし俺のこと、待っててくれるつもりが少しでもあるなら、明日、船が出る時、見送りに来て。何も言わなくていい。ただ、手振ってくれるだけでいいから…」

抱きしめた手を緩め、それでも一気に放してしまうことが出来なくて、旭の半そでを握ったまま。

俺の一大決心が、旭に上手く伝わればいい。

諦めないで。

始まりかけた、この想いを。

自分で握りつぶそうとしないで。

必死で、がん見する俺を、旭の腕がはじけるように開かれ、抱きすくめられた。

すっぽりと包み込まれた体は、痛いほどにきつく、俺を旭に押し付けた。

旭はずっと何も言わないまま。

俺を抱き締め続けた後。

ふっと、その腕から、力を抜いた。

「ありがと」

そして。

「ごめんな」

それだけ、言うと、俺の体を自分から、引き剥がした。

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wakano(プロフ) - *華*さん» なんだか、これだけ細かく書いてると、最後までいくのに何ページ使うの?って思うんですが、きっと旭も丁寧にやろうとするだろうし、誠は、『わっきゃっ』うるさいだろうし、と思うと、なかなか進みません(汗)何より、ちょっと楽しくなってきた(笑) (2014年10月2日 22時) (レス) id: 660e647bc0 (このIDを非表示/違反報告)
*華*(プロフ) - 脱ぐってまこっちゃん男らしいね!(笑)でもそこでリードを渡さない旭も男らしい。ふたりの相手を想う気持ちと初々しさにニヤニヤしちゃいます。 (2014年10月2日 10時) (レス) id: 05fe7ce0c3 (このIDを非表示/違反報告)
wakano(プロフ) - *華*さん» 旭の母ちゃん、とっても書き易いいい人です(笑) 苦労人なんですが、それ故さっぱりしていてかっこいい。味方でよかったねという感じです。ここの場面はラストに持ってこようかどうしようかと迷いましたが、残された時間に気がつきどうするべきか考える誠を書きました (2014年9月28日 19時) (レス) id: 660e647bc0 (このIDを非表示/違反報告)
*華*(プロフ) - 怒涛の更新お疲れ様です☆思わず旭母ちゃん初対面のときを読み返しちゃいました(о´∀`о)誠からそんなこと伝えるなんて、何だか感慨深いです♪(気分はすっかり親戚のオバチャン化した応援団)旭の二人の未来を見据えての落ち着きが嬉しいです(*´∀`)♪二人共頑張れ~ (2014年9月26日 11時) (レス) id: 18f431e9cb (このIDを非表示/違反報告)
wakano(プロフ) - 天羽さん» はい、いよいよです。長かったわ〜(笑)こんなにお初に時間が掛かったのは初めてです。まあ、最初はキス止まりの話にしようと思ってたので、こういうことになってしまったんですが。話としては一ヶ月少々のお話ですが、私の積もり積もったものをぶつけたいと思います。 (2014年9月26日 6時) (レス) id: 660e647bc0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:wakano | 作者ホームページ:http://wakano.blog.fc2.com/  
作成日時:2014年5月25日 21時

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