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シノは俺のシャツの襟首を掴み、グイッと引き寄せたかと思うと、ゆっくりと俺の唇に自分の唇を押し当てた。
周囲の空気がぴたりと動きを止め、何気なく漂っていた視線が一斉にこっちに集中した気がした。
あまりの出来事に呆気に取られ、瞬時にフリーズしてしまった俺から、シノは余韻さえ周りに感じさせる優雅さで、離れた。
「…心配要らないから。ちゃんとこうやって、後釜も見付かったって、今日は報告に来たんだよ」
その時に浮かべた、大場ちゃんの表情は、言葉をなくし、何も言えないでいるのは、俺と同じでも、落胆と、悲しさと、口惜しさと、優しさと。
何もかもがごちゃ混ぜな複雑なもので、その黒目がちな瞳の表面が水分で満ちてくるのが、目に見えて分かった。
いつも、俺たちには軽快に楽しく話しかけてくれるその唇が、への字に閉じられたまま、開こうとしない。
「…じゃあね。大場さん。…行こう章さん」
シノが俺の上着の袖口を握って、引っ張る。
俺は竜巻のように一瞬にして、世界がぐるぐると回り、目に見えないものが壊されたのを感じた。
大場ちゃんの想いと、シノの思い。
呆然としたままの俺を尚も引き、無理に戸口に体を向けられた時。
「専務！」
背中で声が聞こえた。
振り返らないでも分かるその声。
今日、俺はそいつのことで頭を一杯にしていて。
そいつのことをネタに、愚痴りながら(本当はちょっと面白がりながら)笑って酒でも飲もうって、位の話だったのに。
振り返って冬馬を見ると、冬馬は何故か泣きそうな顔をしていた。
いつも、好奇心一杯の子供のようなやつで、俺や周りを振り回すのに。
なんで、お前まで傷付いた顔して俺のこと見るんだよ？
「……と…」
名前を呼びかけたところで、ぐいっとシノが俺をドアの外に押し出す。
その後も、待たせておいたタクシーに一直線に駆け寄って、俺を押し込み、自分もそのままシートに傾れ込む。
「…やった。時間ぴったり」
ドアが閉まると、シノはシートに深くもたれ、そう言ってにやりと笑った。
「…運転手さん、××町ね」
俺のマンションのある町名を告げる。
「……あ〜気持ち悪かった」
そう言って、口元をごしごしと手の甲で拭った。
「…お前…図ったな！！」
やっと動くようになった俺の口から出た言葉は、
「章さん、まるで武士だね〜」
物凄く情けなかった。
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wakano(プロフ) - ＊華＊さん» ６月中に書ききりたかったんです！ちょっと意地で書き上げました。だって、早く始めないと夏が終わっちゃうんです！早く取り掛からないと！また真冬が来て、断念するか、寒い中うだるような暑さを想像して書くかの選択になってくる！と思ったんです。夏物語頑張ります！ (2013年7月1日 22時) (
レス) id: 079ef5676a (このIDを非表示/違反報告)
wakano(プロフ) - あおみさん» どうにか、纏まりましたかね？（笑）書き終えて思ったこと。『やっぱり、長い話の主役を章さんにするのは、私には無理がある』よく分かりました。やっぱり、ＭＯですね。でも、だんだん冬馬のことが可愛くなってきちゃって。次では一人称を語らせたいと思ってます。 (2013年7月1日 22時) (レス) id: 079ef5676a (このIDを非表示/違反報告)
＊華＊(プロフ) - 日曜日なのに怒涛の更新お疲れ様です！淳くんはこれで本当にホッと出来るかな(笑)プロポーズに花束なんて…色男は違う☆シノの言った通りですねっ。これは章さんの負けだわ(笑)全員が丸く（？）収まり一安心です。夏物語！やったーっ此方も楽しみにしてます♪
(2013年6月30日 20時) (携帯から) (レス) id: 27604c18e7 (このIDを非表示/違反報告)
あおみ(プロフ) - ありがとうございました！章さんの受難はまだ続く？みたいな（笑）それでも冬馬は気持ちを伝えられたし、シノ達も聡君達もハッピーで。それにハロマイ！お利口に待ってました！またﾄﾞｷﾄﾞｷの日々が過ごせます。楽しみにしてます！ (2013年6月30日 19時) (レス) id: 65e0db38aa (このIDを非表示/違反報告)
wakano(プロフ) - ＊華＊さん» そうなんです。嘘から出た誠って奴ですか？深夜に盛り上がって、寝ちゃったら起きれないだろう、ことで二人仲良く風邪引いてもらいました（笑）章さんがなかなか頑張れないので、これから冬馬が頑張ります！ (2013年6月27日 5時) (レス) id: 079ef5676a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：wakano | 作者ホームページ：http://wakano.blog.fc2.com/
作成日時：2013年3月27日 0時
