ただ、誰かを守りたかった【Fate】【僕のヒーローアカデミア】 (ページ36)

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参拾陸ページ36

――――ああ。

生徒が喋る。先生が喋る。
声を音としてのみ認識して、私はただ一点を見つめていた。

あれは。あれは。あれは。

知らない憎悪が湧き上がる。
忘れた怒りが胸を焦がす。
破壊衝動が思考を犯す。

茶色の髪。剃られた髭。
中肉中背。丸まった背中。傲慢を形にした表情。
全てが思い通りになると目出度くも信じ込んでいる顔。

周りが制止する声が出る前に、私は男の前に駆けだした。

「Appeler(来たれ)」

一小節(ワンカウント)。指差しのただそれだけで、死霊が湧き出る。
この程度か、と私の中の彼女が憤る。
黒鍵の刃を表す。紙片を滑らせ、灰錠が本来の形を取り戻す。

黒鍵を投げつけ、死霊を消滅させる。
顎を蹴り砕こうとしたその時、強い魔力が渦を巻く。走る悪寒から強引に身を引いていた。

果たして、そこにいたのは。

「呼んだか、マスター」

白い髪の美丈夫。肌と一体化した黄金の鎧。輝く豪奢な槍。
ランサーのサーヴァント、カルナが立っていた。

「……領王(ロード)」

武器を構えたまま、王を呼ぶ。
ここまで接近しているのなら、実体化した方がいい。

「あのサーヴァントを殺せ、ランサー！」
「バーサーカー、お願い致します」

サーヴァントはサーヴァント同士、マスターはマスター同士。
それぞれ武器を構えて向かい合った。