ただ、誰かを守りたかった【Fate】【僕のヒーローアカデミア】 (ページ19)

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拾玖ページ19

さて、どうしようか。
頭部、腕部と順番に切ってしまうか、先に脚部を切って機動力を奪うか。

ここが市街地でもなければ先に脚部を破壊するのだが、この巨体が倒れては大惨事だ。流石にそれは呑み込めない。となると……。

「上から切り落とすか」

たん、たんと建物の屋上を走り、飛び越え、ロボットに近づく。
十分に近寄ったところで、とんと一つ大きく跳んだ。

勢いをそのままに駆けのぼる。不安定な足場だが、これくらいでは落ちはしない。
すぐに登頂にたどり着き、刀を一閃。ひゅんと小気味いい音がして、首が墜ちた。

(柔らかいな)

と、そんな感想を抱く。モデルはヒト型のようだから、これで空間の把握はやりづらくなったはずだ。

続けて左右の腕を落とし、刀を鞘に戻す。
両手をロボットに触れ、強化の要領で魔力を通した。

強化の魔術とは、魔力を通して対象の存在を高め、文字通りの効果を発揮する魔術だ。
ナイフに使えば切れ味が鋭くなり、ガラスに使えば硬くなる。私もこの刀に対して使っている。

基礎中の基礎ではあるが、極めるのは困難だ。全ての魔術の基本なのだが、その自由度の高さからか明確な実行形式が定まっておらず、オールマイティな強化使いは少ない。

これは完成した芸術品に筆を加えることに似ている。完成している物に手を加えるということは、完成度をおとしめる、という危険性も孕んでいる。

──つまり。

あえて失敗すれば、対象を極めてもろくすることも可能というわけだ。
通す魔力量は多すぎても少なすぎてもいけないため、少し調節すれば簡単に壊れる。

無意識に適切な量を流してしまいがちだから、そこは気を付けなければならないが。あと力業なのであまり美しくない。

重力と自重によって、建物よりも大きなロボットがもろくも儚く崩れ去る。
タイミングを合わせて飛び降り、軽々と着地する。丁度そのとき、終了のアナウンスが入った。

「終わり、か」

呟いて、足を踏み出した。やれることはやったし、これでいいだろう。結果は一週間くらい待つんだったな。

落ちるなどとは想像もせず、治癒の”個性”を持つ方が来るまで歩けない人間に寄りそう。
腫れた足首が痛々しい。

全ての人が治療されるのを見届けて、それから帰路についた。

飴をもらった。甘い。