第51話 ページ6
一目見て、白い鳩のようだと思った。
金より白に近い長めの髪を、白いリボンで緩く結んでいる。瞳はペリドットのようで、左目尻には泣きぼくろがある。綺麗に伸びたまつ毛が、白い肌に影を落としていた。
その姿には見覚えがあった。さっきの『お誕生日おめでとうございます』の列で、ニーゼル侯と一緒に挨拶に来た子だ。一瞬女の子かと思ったが、着ていたのは水色のスーツとハーフパンツだったので、驚いたのを覚えている。
名前は、確か…
「アルフォンスです。アルフォンス・ニーゼル…コースタス・ニーゼルの息子です。」
私の心を読んだかのように、彼は自分の名前を告げ、以後お見知り置きを、と頭を下げた。私もテラスの手すりにグラスを置き、スカートをつまんで一礼…するまでに、数秒の空白があった。
コースタス・ニーゼル。
その名前が、彼の下品な笑い顔を彷彿とさせたからだ。
は、と気づいて礼をし、顔を上げると、一瞬、眉を寄せた苦い顔があった。
「あ、ごめんなさい…」
慌てて謝る。アルフォンスは目を細め、柔らかい笑顔で首を振った。しかしその笑顔は、何かを諦めたような感情を含んでいた。
「いいんです…分かっていますから」
そう言って、ゆっくりとベランダの手すりに手をかけ、無機質な灰色に顔を向けた。
「父の噂は、どこにいても聞こえてきます」
勿論いいものではありません、と吐き捨てるように笑った。
「…私は、貴方が羨ましい」
「貴方のお父上は偉大な人です…権力や財力だけではない、父親としての素晴らしい心も持っていらっしゃる」
「…私の父とは、大違いだ」
端正な顔を歪ませ、苦虫を噛み潰したような顔をする。手すりの上の両手は硬く握られ、震えていた。
私は言葉を失い、ただその横顔を見つめるばかりだった。
広間から曲が流れてきた。オーケストラの演奏に合わせて、紳士淑女がゆったりと踊り出す。
「室内では人にぶつかるかもしれません…私と、ここで踊っていただけないでしょうか？」
そう言って私に向き直り、白い手袋に包まれた右手を差し出した。負の感情はもう見えない。綺麗な顔の下に、隠してしまったのだろう。
「…はい」
彼とは、またいつか会うことになる。そんな気がした。
踊りながら、私はアルフォンスに、気になっていたことを質問した。
「そういえば、貴方は何才なの？」
「11です」
「…え？」
「11です」
私より5cm程高い、光るような笑顔を前にして、私の意識は一瞬飛びかけた。
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美翔(プロフ) - ニャー♪さん» コメントありがとうございます！ちまちま伏線を仕込んでいたりするので、楽しみにしていてくださいね♪ (2015年2月7日 23時) (
レス) id: 25a2966a5a (このIDを非表示/違反報告)
ニャー♪ - とても面白いです！これからの展開が楽しみです♪ (2015年2月7日 22時) (レス) id: 0827b25480 (このIDを非表示/違反報告)
フラン(プロフ) - 小悪魔女子さん» コメントありがとうございます！楽しんでいただけているようで、本当に嬉しいです。これからも頑張ります！ (2014年12月25日 15時) (レス) id: 45953354bd (このIDを非表示/違反報告)
小悪魔女子 - 物凄く面白く楽しませてもらってますそして私は、応援してます！ (2014年12月24日 1時) (レス) id: 8999ac6131 (このIDを非表示/違反報告)
夏実(プロフ) - 頑張って下さい!!ずっと応援しているので！ (2014年11月29日 23時) (レス) id: 129fe6e4a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：美翔 | 作成日時：2014年6月11日 7時
