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風間隊としての何度目かの遠征。
もう、生身の人と戦闘するのも慣れてしまった。
いや、慣れざるを得なかった。
自分達が黒トリガーに相当すると判断され、遠征という命を受けた時点から覚悟していたことだ。
拐かされた市民の人たちを助ける為、と銘打って自分を奮い立たせていた。
けど、目の前の彼女を見ると自分はひどく冷酷な人間なように思えてくる。
歌川「A、大丈夫か？」
『うん。』
隊長が報告している部屋の前でぼうっとしている彼女に優しく声をかけたが、聞こえているのかいないのか、帰ってきた返事は明らかに空返事だった。
『遼はさ、やめたいと思ったことないの？』
歌川「…辞めたいのか？」
『そういうわけじゃないんだけど、』
ここで途切れた彼女の言葉を、じっと顔を見つめたまま待つ。
俺の視線に気づいたのだろうAもチラリと俺の方を見て驚いたように二度見された。多分思っていたより俺が見つめ過ぎていたのだろう。
合わさった視線を、俺は逸らすことを許さなかった。
ふらりと瞳が揺れたと同時に、わずかに開かれた口からは続きが語られた。
『ちょっとだけ、疲れてる。のかもしれない。』
よく分かんないや と眉を下げて笑う顔は幼い頃によく見たものだった。昔から、変なところで大人びていて遠慮することが多かった。
俺が彼女の家庭環境を知ったのだって、つい最近のことだ。問い詰めて問い詰めて、やっと話してくれた。『そんなの気にしてると思わなかった。』となんとも呑気な言い訳をされたのは今でも納得いっていない。
歌川「Aが辞めたいというなら止めないが…。」
『やめないよ。私がやめたら隊長すぐ死にそうじゃん。』
歌川「…そうかもな。」
『遼はいなくならないでね。』
歌川「当たり前だろう。Aを置いていくなんて、心配すぎてできない。
まずはもっと生活力をつけてくれないとな。」
『なにそれ。そういう意味じゃないわ。』
もちろん俺だって分かっている。彼女はもう散々誰かから置いてこられたのだ。
もうそんな思いはさせないと決めている。
彼女は作ってね！だなんて吐かす彼女の頭を軽くチョップしておいた。
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作者名：通りすがりのいぬ | 作成日時：2022年9月14日 19時
