恋心メモリー ページ16
私たちが2年に上がってすぐのころ。
クラスでは懇親会を開こうと盛り上がっていた。当然私含むボーダー隊員たちも例外でなく、イレギュラーな仕事な分、こういうイベントごとには積極的に参加するようにしていた。
「海いこーぜ！」
「まだ寒いだろ。…まぁ今日はまだ昼だしいけるか。」
「足だけならいけるんじゃない？」
出水「海だってよ〜、おもしろそう。」
『泳がないなら楽しそうだよね。』
海なんて、行った記憶ないな。内心浮立つ気持ちを抑えつつ、みんなの後ろについて電車に乗り込む。
始業式で早く終わった私たちの他に乗客はいなくて、貸し切った状態の電車もなんだか青春の1ページって感じ。
ちなみに同じクラスになったボーダー隊員は出水と米屋くんで、こればっかりは本当に出水がいてよかったと思う。
まぁ電車の中だと、出水は私の後ろで米屋くんと他の男子と楽しそうにしてるけど。
私はというものの、近づいて来た海をもっと近くで見てみたくて、ドア付近で1人立っている。
『おぉ〜……。』
高い太陽の光がキラキラと反射して、思わず目を細めてしまう。海ってこんなに綺麗だったんだ…。
思わずドアに張り付いてじいっと見つめてしまった。
と、その時。ガタンっと大きな音を立てて電車が揺れた。私はドアに張り付いていたから平気だったけれど、
「…っと、ワリ…。」
自分の顔のすぐ右。急に伸びて来た大きな手のひら。
思った以上に近くから感じる他人の体温。すぐ上から聞こえてきた、男性特有の低い声。
なんだかその全てが恥ずかしい。だって少女漫画みたいじゃん！
あ、私今、首まで赤いと思う。ドアの方を向いていたから顔は見られてないと思うけど、首はバレたかもしれない。
いや、バレてないと信じたい。
『ううん、大丈夫。』
なるべく平静を装いながら返事をする。うん、きっとバレてない。
後ろから体温が離れていくのをしっかりと確認してから、心配してるのかしてないのか分からない出水の声に、大丈夫と生返事をしながらパタパタと手で顔を仰ぐ。
『(びっっ、くりしたぁ…。漫画以外であんなこと、本当にあるんだ…。)』
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作者名：通りすがりのいぬ | 作成日時：2022年5月19日 20時
