月の光 1 ページ2
*
その日の練習は、烏養監督の都合でいつもより早く全体練習が終わった。
影山とかノヤっさんとか、田中さんとか旭さんは自主練するって言ってたけど、何を思ったのか、俺は「今日は帰る!」とそう言った。
「あの日向が居残らないで帰るだと!?」と心底驚かれたけど、何でか自分の言葉を覆す気にはなれなくて、「お疲れっした!!」と叫んですぐに体育館を出て部室で帰り支度を整え、帰路についた。
チャリ通とは言え一つ山を越えて来ていると言うことは皆知ってたし、「日向が早く帰る日もあるか」と納得してもらえたからこそ、さっさと出てこられたんだろうけど。
烏野高校を出てすぐ、ブレーキなしで一気に坂を下って、そのまま自転車をこいでいく。
そう言えば暫く、油さしてなかった。ひどくギャリギャリと耳障りな音を立てる自転車。
普段はすげぇ急いでるし、こぐことよりも着いたらまず何を練習しようかとか、昨日影山にこう言われたなとか、そっちに意識がいってるから気にならなかったのに、今日に限って酷くそれが気になった。
「煩いもんなぁこれ……」
ポツリと呟いて、俺は自転車を降りた。
よく良く考えれば、今日はいつもより早いんだ。だったら押して歩いて帰ってもいいんじゃないかって。
カラカラと音を立てる自転車を、ゆっくりと押して歩く。
ちょうど日が沈んで、辺りが暗くなり始めた頃だった。
少し先に、人が立っているのが見えた。
こんな時間に、こんな所に。しかもその人は、見慣れない制服を着ていた。
セーラー服って、言うんだっけ。そんな感じの、なんか、そう言う服を着た、女の人。俺と同じくらいの。
高校受ける時、烏野以外に興味がなくて他をひとつも調べなかったから、ここら辺の高校もまともに知らない俺は、何処の高校だろうなって思いながら、通り過ぎようとした。
でも、俺は自分の通るこの道で、自分以外の学生を見かけたことがあんまりなかったから、物珍しさに、追い越してからもその人を思わず振り返ってて。
すると、その人と不意に、目が合った。
その人は、驚いたような顔をした。それからキョロキョロと辺りを見回してから、おずおずと俺を呼び止めた。
「あの!」
「ひゃい!」
予想もしてたのに、口から飛び出したのは、そんな情けない返事だった。
*
25人がお気に入り
「ハイキュー」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
西谷彩香(プロフ) - せみさん» コメントありがとうございます!日向のあの真っ直ぐな感じを活かしてどう作るかを考えた時に偶然登場してた(特に深い意味もないし名前もホントはなかった)合田おじさんが大活躍でしたあっぱれ。そう言っていただけて嬉しいです!ありがとうございました! (2018年10月6日 12時) (レス) id: 5f1947d42c (このIDを非表示/違反報告)
せみ - 感動しました!!日向は日向のままでいるとこんな作品が出来るのか、、、!とびっくりしました笑 本当に面白かったです!お疲れさまでした!これからも頑張ってください。 (2018年10月6日 10時) (レス) id: ac69ea21d6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:西谷彩香 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kunimi251/
作成日時:2018年8月15日 8時