出会いは唐突ながら ページ1
今夜は綺麗な満月だ。
月から煌々と放たれる清輝は闇に沈んだ部屋を淡く照らす。
この広い部屋、ただ一人の住民であるうらたはベッドの上で身を起こす。
唯一の窓に面している、うらた一人では大きすぎるベッドでは、窓から覗く月がよく見える。
今は深夜。
いつもうらたの傍を離れない執事も、
扉の前にいる見張り人も、
うらたの外面ばかり気にする両親も、
誰もが眠る深夜零時。
館の灯りを落としたこんな夜更け、うらたが起きていることなんて誰にもバレたりしない。
冷たい窓枠に囲まれて小さく見える外の世界に見惚れているなんて、
外に一歩も出たことなどない箱入り少年が、
外に憧れを抱いているなんて、誰にも、気付かれない。
執事はずっと傍を離れないけれど、個人的な介入はしてこないし、
扉の前を見張っている見張り人も、自由に自分の意思で部屋の出入りが出来ないうらたの部屋には入って来ないし、
両親もうらたの外面ばかりを求めて内面は見ていないし、
だから、深夜に窓から月をただ見上げる少年の心の内など、誰も分からない。知らない。
普段なら絶対にしないであろう窓の鍵を開ける行為も簡単に出来る。
だって誰も見てないから。
窓を開け、ひんやりとした夜の外気に頰を晒す。
外の空気を感じながら、そっと手を伸ばす。
白銀に照らされた、星が散りばめられ、さんざめく夜の、外の世界に。
決して届かないことを知っていながら。
大きな満月にその小さな白い、華奢な手をかざそうとした、その瞬間、
「こんばんは、お嬢さん。今夜は満月がとても綺麗ですね。」
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箱庭のノア - かなりのご迷惑をお掛けになりましたが、それでも続きが見たいという方は、新しい小説の方もよろしくお願いします。 (2019年2月3日 21時) (レス) id: b72178bd91 (このIDを非表示/違反報告)
箱庭のノア - 新しい題名は、『夜の愛し子〜改〜』です。 (2019年2月3日 21時) (レス) id: b72178bd91 (このIDを非表示/違反報告)
箱庭のノア - 作者です。『僕と君の奇妙ワンルーム物語』でもお知らせで書きましたが、こちらにも一応書いておきます。この作者『夜の愛し子』の作品制作のパスワードを忘れてしまったので、この小説は打ち切りで、また新しく小説を書きます。 (2019年2月3日 21時) (レス) id: b72178bd91 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:箱庭のノア | 作成日時:2019年1月17日 22時