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しばらく走ると、リクオに追いついた
「リクオだめでしょ?勝手に走り出したら」
「あれー?いなくなっちゃった」
「何かいたの?」
「うん…」
辺りを見渡しても誰もいない。
私はしょんぼりするリクオの手を引いて踵を返した
「行こ!リクオ。
お父さんとお姉ちゃんが待ってるよ!」
「うん!」
私達は駆け足で来た道を戻った。
でも私達が目にしたのは
血の滴る刀を持った
倒れて動かないの姿だった________
「そうじゃ、
今まで霧がかかったように曖昧だった思考が
徐々に醒めていったのを今でも覚えている。
血溜まりに倒れる父。
女の子の手にしているのは血塗れの刀。
そう、父は刺されたのだ。
「お父さん!!」
私は女の子など無視して父に駆け寄った
「リオナ……」
「お父さん、お父さん…!待ってて、今治すから!」
そう言ってお父さんの体に手をかざし、
力を集中させる。
黄色い光はいつものように出てきた。
「お主、珱姫か?
…いや、珱姫が生きていたのは400年も前のこと。
嗚呼、あやつの孫娘か。
その力といい容姿といい
まるで生写しのようじゃのう」
「逃げろっ…リオナ!リクオを連れて!!」
「嫌!嫌!絶対逃げない!!」
黄色い光と一緒に、涙も出てくる。
途切れかけそうな光を私は必死に父に当てた。
当時の私の治癒能力は、
擦り傷を治すくらいが精一杯だった。
刀疵、それも貫通した傷口なんて
その時の私に治すことなんて、到底できなかった。
「止めろ……これ以上、力を使えば…」
「お父さん死なないで!死んじゃだめ!!」
父の声なんて聞こえていなかった。
私はこれから先、
一生分の治癒の力をお父さんに注いだ
……煮えるように熱くなった血を押さえながら
「リオナもういい……リオナ?」
プツンと音がしたのを覚えている。
次の瞬間、水が満タンに貼ったダムが決壊したように
手から物凄い光が出た
父の腹の傷は一瞬で治った。
そして私の視界は真っ暗になった______
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作者名:kumakarin0110 | 作成日時:2020年7月7日 22時