魔法薬学教授の部屋３ (ページ35)

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希少価値ページ35

(魔法薬学研究室)

いつもより多分に色を含んだセブルスの声にびくっと身体が震え、思わず１歩後ろに下がると、セブルスは掴んでいたAの手をぐっとひっぱり、そのままAを抱きしめた。

「……セブ……？」

少し様子のおかしいセブルスにそっと声をかけると、セブルスが苦しげに答えた。

「……しばらく、このままでいさせてくれ……」

(でないと、吾輩はお前に何をするか分からん)

突然自身に宿った情欲を必死になだめているセブルスを、Aは訳もわからないまま抱きしめた。

＊＊＊＊＊

数分後、ようやくいつもの冷静さを取り戻したセブルスは、Aに己の欲望をぶつけなかったことに安堵し、そうなった原因について考えていた。

(吾輩が口にしたもの……Aの血か？しかし、人の血に催淫作用があるなどと聞いたことがない。……だが、Aはこの世界の人間ではないのだから、こちらの人間に何らかの作用を及ぼす可能性も否定できない……)

一方、Aはいまだセブルスの腕の中にいた。先ほどとは落ち着いたようなセブルスに安心したものの、そろそろAの心臓が持たなくなりそうだった。

(……もう限界……っ!!)

と思ったとき、セブルスが研究者の顔でAに伝えた。

「今日の調合は中止だ。……A、すまないがお前の血液を少し採取する」

「……私の血……？」

長い間抱きしめられていたため、顔がほてったままのAの傷ついたほうの手を取ると、人差し指からまたじわりと血液が滲んでいた。

セブルスは手近にあった試験管を手に取り、なるべくAに痛みを与えないように、そっとAの血液を採取した。そして、Aの手にハナハッカ・エキスを少量たらし、傷を癒した。

(ハナハッカ・エキスがあるなら、私の指を咥える必要なかったじゃない……)

納得いかない表情でセブルスを睨んだが、セブルスは素知らぬ顔で紅茶とカップケーキを少し離れたテーブルに準備し、

「吾輩が作業をしている間、紅茶でも飲みながらそこで待っていろ」

と、ソファーを顎で示した。

＊＊＊＊＊

Aは、セブルスが淹れてくれた紅茶を飲みながら、セブルスの作業をじっと見つめていた。自分の不注意で強化薬の調合が中止になったのは残念だったが、そんなことよりも今セブルスが自分の血液の何を調べているのかが気になった。が、聞いても教えてくれないだろうとあっさり思考を手放した。