邦楽ロックの短いおはなし

指【磯部寛之】 ページ2

「ひろは指、綺麗だね」









彼女が突然、そんなことを言いだした。







「いきなりどうしたの？」






そう彼女に尋ねると







「ひろが羨ましいよ〜」









なんて伸びをし始める彼女。









彼女は今、小さな花屋を経営していて彼女の指は皮が剥けていたり赤くなっていたり。






冬なんて、辛そうにしているのを何回もみて心が痛んだ。








「綺麗な指だね」






「Aがそれだけ頑張ってるってことだよ」






「ひろはもっと綺麗な指の人がよかったでしょ」









なんて珍しくストレートに言う彼女。







「なに言ってんの。俺はAが好きなんだから、指とかそんなの関係ないよ」






「あはは。ひろは優しいね〜」









そういって俺の指に自分の指を絡ませてくる彼女。









「しもやけ痛いよ」






「その痛み俺にも分けてよ」






「何言ってるのもう〜ひろの指がこんなのになったらかわいそう。ベース弾けなくなっちゃう」






「それはやだなー」






「もう！どっちだよ〜！」









頬を膨らませてこっちをにらんでくる彼女。








…可愛いな。









指で彼女のことを嫌いになれるわけがないだろ。






指でこんな彼女を手放すわけないだろ。









「ひろ」





「何？」





「大好き」





「知ってる」






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