第140話 ページ47
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「なんだーオマエも気になるのか?」
グリーンは楽しそうにイーブイを撫でまわしている。
「進化前のオマエだからこそ与えられたとんでもなく強い技があるんだぞー?」
「ぶいー?」
「グリーンさん、楽しそうですね」
「まーな!」
と、その時、「ああっ、イーブイ!」と少年の声が聞こえてきた。
声のした方を見ると、6歳くらいの男の子と、そのお母さんと思しき女性がこちらへ駆けてくる。
それに気づいたイーブイは、嬉しそうに「ぶいー!」と全力で手を振っている。
「お、どうやら家族のお出迎えみたいだな」
「ええ」
男の子はAの前に到着すると、イーブイの耳についているリボンを見た。
「間違いない、このリボンぼくが巻いてあげたやつだ!」
「ああよかった、見つかって!」
親子は心底安心したようにほっとした笑顔を見せている。
「この子は君のイーブイ?」
「うん!いなくなって探してたんだ……」
「そうなのね。はい、どうぞ」
イーブイを男の子に渡すと、「よかったあ……」とイーブイを抱きしめている。
イーブイも嬉しそうに男の子にすり寄っているので、お互い大事な家族であることは間違いなさそうだ。
「この子、ぼくの誕生日にパパがくれた子なんだ」
「そうなんだね。これからははぐれないようにしっかりね」
「うん!ありがとうお姉さん、お兄さん!」
お母さんも「本当にありがとうございました」と頭を下げる。
「すみません、ご夫婦の時間を割かせてしまったようで……」
「「ふ……!?」」
今日一番の衝撃に固まる二人を見て、「あら勘違いでしたか」とお母さんは意外だと言わんばかり。
「イーブイの相手をしているお二人が、まるで自分たちの子どもを可愛がっているようで……」
「「……」」
「勘違いしてごめんなさいね。……それじゃあユウタ、行こっか」
「うん!バイバイ、お兄さんお姉さん!」
「バイバイ!」
「もうイーブイ不安にさせるんじゃねーぞ!」
親子を見送ったAとグリーンは、しばらく何も言えずに突っ立っていた。
「……今日はなんなんだろうな」
おもむろにぼそりと呟いたグリーン。
「タケシにはデートとか言われるし、あの母親には夫婦に勘違いされるし、何か底知れぬパワーでもはたらいてるのか」
「……どうなんでしょうか」
Aはこれだけ言うのが精いっぱいである。
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作者名:リトルポム | 作成日時:2022年8月3日 23時