第126話 ページ33
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来て言うのもなんだが、このブランドは別にAが着るような服があるわけではない。
Aは研究者として必要なものを優先的に選んでいるので、どちらかというと服はシンプルで装飾が少ないものが多い。
しかしこのブランドの服は、それこそ「お洒落」「可愛い」「綺麗」と見た目からして女子が喜ぶデザインが取り揃えられている。
フリルにレース、リボンといったところから、キラキラのビジュー、チュールにシフォン、シースルー、冬物ならファー、などなど。
興味はあっても自分の生活にはそぐわない洋服たち。
だから別に買おうとは思わないが、Aも女子の端くれなので、こういう可愛いお洋服を見ているのは好きだった。
研究者という選択に後悔はないし、むしろ誇りに思っている。自分が一番情熱を傾けられる仕事をできていることは本当に幸せに思う。
ただ、こういうところにいると、「もし自分が違う選択をしていたら当たり前に着ていたのだろうか」などと馬鹿げた考えが浮かんできてしまう。
別に、研究者だからと言って着るものに制限があるわけではない。
ただ、自分の情熱を貫こうとした結果、現状がこうなだけ。
でもやっぱり、どこかで「可愛い」とか「お洒落」とか、そういうものに羨望の眼差しを向けてしまうような微かな燻りはある。
「……でも買ったところで着ないんだよなあ」
「なんでだよ、着ればいいじゃねえか」
「ッ！？」
背後から急に声がしたので肩を揺らしてしまう。
振り返ってみると、そこには兄とレッド・グリーンが立っていた。
兄の手にはショップの袋が握られているから、買い物は終わったということだ。
「あ、買い物終わったんですね……」
「おうよ。んで、買ったところで着ないって？」
「聞かれてたんですね……」
Aは軽くため息をつく。
「そのままですよ、研究者してると仕事と休みの区別がつかなくなるので、基本的に研究に適した服装してるんですよ」
「ふーん……じゃあ着る用事を作ればいいじゃねえか！」
グリーンが名案だと言わんばかりに手を打った。
「着る用事を作るって……私普段研究所かバトルツリーかくらいにしかいませんけど……」
「我が妹ながら地味に寂しい生活だなあ……」
後ろの方でククイ博士が苦笑しているので軽く睨んでおく。
「そこでだ。俺から提案がある」
「な、なんでしょう……？」
グリーンが何を言うのか見当がつかず、思わず身構える。
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作者名：リトルポム | 作成日時：2022年8月3日 23時
