第123話 ページ30
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食器を戸棚に全て片付けた二人は、改めてAの寝顔を覗き込む。
クマはひどいものの、眠りは安らかなようである。
「……ぐっすり寝てるね」
「ああ。……これで多少なりとも睡眠不足が解消すりゃいいんだがな」
グリーンはAの瞼に浮き出るクマをそっと指でなぞる。
「んじゃ、ゆっくり眠れよ。レッド、帰ろうぜ」
「……うん」
二人はもう一度Aの姿を一瞥してから、そっと研究所を出ていった。
「……？」
Aが目を開けた時、飛び込んできたのは暗闇だった。
思わずがばっと起き上がる。
「私……どうして」
辺りは真っ暗、自分の他には誰もいない。
身体に当たる感触から、自分が1階のソファに寝ていたこと、ブランケットがかけられていたことはわかった。
「とりあえず、電気を……」
窓から差し込む月明かりだけを頼りに、そろそろとソファを抜け出し、灯りのスイッチを探す。
数分かけて、ようやくスイッチに辿り着き、パチン、と押し込む。
パッと一気に部屋が明るくなり、眩しさに目を細める。
「……私、なんでソファで寝てたんだっけ」
意識を失う前のことをよく思い出してみる。
確か、兄と共にグリーンお手製の雑炊という料理を食した。
それから。
「……その後の記憶が無い、ってことは、そのまま寝落ちした？」
とすれば、誰かがAをこのソファまで運んでくれたということ。
「誰に対してかはわからないけど、ご迷惑かけちゃったか」
とにかく、数時間ほど寝て過ごしてしまったことは確かなので、なるべく早く学会準備に戻らねばならない。
ブランケットを丁寧に、しかし手早く畳み、Aは早足で自室へと向かう。
グリーンお手製の食事のおかげで、エネルギーはチャージできた。
仮眠もとったし、気力は十分。
Aは気合を入れ直し、デスクに着くのだった。
学会2日前。
ククイポケモン研究所では、研究者2名が慌ただしくキャリーバッグに荷物を詰めていた。
ククイ博士も論文は無事締め切りに間に合ったし、Aも準備はばっちり、発表資料もしっかりUSBに保存してある。
この後の飛行機で、今回の学会開催場所であるタマムシ大学————要するにカントー地方まで飛ばなくてはならないため、乗り遅れないように必死というわけだ。
と、ピンポーンと研究所のチャイムが鳴った。
「あーA、出てくれ」
「はいはい」
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作者名：リトルポム | 作成日時：2022年8月3日 23時
