第121話 ページ28
.
1階に到着すると、キッチンの方からほんのりと優しい香りが漂っている。
「いい匂いがするな」
「うん……グリーンさん、キッチン借りるって言ってたからお料理でもしたのかな」
キッチンに到着してみると、「お、よーやく来たな！」とグリーンが嬉しそうに言った。
「さ、二人とも座れよ！メシできてるぜ」
グリーンが言う通りにテーブルについてみると、ほかほかと湯気を立てる料理があった。
お米、溶き卵、一口大のホウレンソウを煮たような感じの料理で、スープのような香りが漂っている。
「グリーンくん、この料理は一体……？」
ククイ博士が首を傾げている、それはAも同様だ。
「あーそうか、アローラじゃあんまメジャーじゃねえのか。これは雑炊っていって、白ご飯と具材を合わせて煮て味付けした料理だな。カントーとかジョウトだとメジャーな料理で、消化にもいいから体調不良の時なんかも重宝されてる」
「なるほど、カントーの料理か」
「Aから聞いたけど、二人ともここ数日マトモな食事してねえんだろ？胃腸の機能も弱ってるだろうし、とりあえず食べやすくて温かい食事を摂れ！」
「お米は炭水化物、卵はタンパク質、ホウレンソウはビタミン豊富、繊維質少なめで加熱してるから消化も容易……」
Aが指折り栄養素を上げていくと「そういうこった」とグリーンも頷いた。
「俺の実家では誰かが体調不良になるとよくこれが出てきたもんだぜ」
「なんだか美味しそうな料理見てたらお腹空いてきたなあ、早速頂こうか」
ククイ博士は言うが早いかスプーンを手に持ち「いただきます」と食事を開始している。
「Aも食べてくれ、ちゃんと栄養摂れよ」
「……はい、いただきます」
ふーふーと冷まして口に入れてみると、口の中にふわっと優しい味付けが広がった。
「美味しい……！」
「だろ？ははっ、だし調味料を必死に探したかいがあったぜ」
「だし……？」
「これもカントーじゃメジャーなんだけどな。ま、気にせず食え食え！おかわりあるぞ」
「ごちそうさまでした！」
ククイ博士の元気な声が響く。
グリーンお手製の卵とホウレンソウの雑炊は、おかわりの分含めて綺麗に完食された(ククイ博士がやたら食べた)。
「いやあ、美味しかったよ！食べやすかったし」
「なら良かった」
「Aもそう思うだろ？……A？」
Aから返事が無いので、ククイ博士がAが座っている席を見る。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 59人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：リトルポム | 作成日時：2022年8月3日 23時
