第46話 ページ49
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その時、ボー、と汽笛が鳴り、「間もなく出航時間でーす！」というスタッフさんの声が聞こえてきた。
「そろそろ行かなくちゃな」
「うん、そうだね。それじゃあお二人とも、またいつかお会い出来たら！」
踵を返した直後に、後ろから、「A！」とグリーンの呼ぶ声がした。
「え？」
振り返ってみると、グリーンが何か言いたそうに口をほんの少し開けていたが、やがて、
「……いや、なんでもねえ！」
と苦笑した。
「元気でな！また遊びに来いよ、歓迎するから！」
「はい！他の皆さんにもよろしくお願いします！」
「おう！」
今度は誰にも引き留められることなく、Aは兄に続いて船に乗り込んだ。
甲板に出てみると、レッドとグリーンがこちらに向かって手を振っている。
Aが手を振り返して間もなく、船は出航となり、二人の姿も、そしてクチバシティの街並みも、すべてがどんどん遠ざかり、やがて視界には真っ青な水面が映るのみとなった。
「……よかったの、グリーン」
「……何がだよ」
クチバシティの港にて。
出港した船を見送った青年二人が、静かに会話していた。
「好きなんじゃないの、彼女のこと」
「……だからなんだ」
「はあ……今後いつ会えるかなんてわからないのに。大事なところでヘタレだよね」
「るせー……」
本当は、引き留めたあの時に、言えればよかった。
けれど、喉元まで出かかったその気持ちは、音になることはなかったのだ。
「……もしアイツが俺の運命ってやつなら、きっとまた巡り逢う日が来る。それまでに、俺はもっといい男になっておくさ」
「……」
レッドは何も言わなかったが、その口元には親のような微笑みが浮かんでいるのだった。
一方、船室にて。
Aとククイ博士は、先程グリーンからもらったニビあられを早速つまんでいた。
「おお、さくさくしていて美味しいな」
「素朴なおやつって感じだね」
そして、Aの片手には、手紙が握られていた。
グリーンからの簡素な手紙である。
「で、グリーンくんなんだって？」
「私たちと知り合えて楽しかったって。連絡先渡しておくから、またカントーに来ることがあったら遠慮なく連絡してくれ、って」
「カントーに気兼ねなく頼る先ができたじゃないか。きっとグリーンくんならAが研究目的で行ってもプライベートで行ってもいろいろと手伝ってくれるだろうね！」
「うん、本当に」
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作者名：リトルポム | 作成日時：2022年4月17日 19時
