第35話 ページ38
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「切り札封印してるってどういうことだよ！それは俺らのこと舐めすぎだろ！」
「落ち着いて下さいグリーンさん。使うとフェアじゃないから使ってないんです」
「使うとフェアじゃない？」
グリーンはわけがわからないという表情でこちらを見ている。
「アローラのトレーナーの中で、特定の条件を満たした人だけが使用できる、『Zワザ』というものがあるんですけど……」
「ぜっとわざ？」
「はい。一度のバトルで一度きりの切り札です。技の威力が大幅に上がります。多少の相性の悪さなら無理矢理突破できてしまうことさえあります」
「なるほどな。俺らカントーのトレーナーはそのZワザを使えない。事前に一人一枚あるはずの必殺のカードを持っているか持っていないか。確かにアンフェアになりうる話だな」
「兄は技の研究者と名乗っていますが、特にZワザのスペシャリストです。兄の戦いの中にはZワザが欠かせない要素なんです」
グリーンは「なるほどなあ」と納得したように頷いている。
「常にZワザを中心にして回っているから、Zワザなしの状態で戦ってみたら意外と手こずってしまったわけだな」
「恐らくは。ただ、見た感じだと、やっぱりグリーンさんはZワザありでも敵いそうにないですね。ナッシーのトリックルームからのだいばくはつに、カイリキーのなげつける、メロメロ。トリッキーさがとても勉強になります」
「そうだろうそうだろう！俺様はグリーン様だからな！」
どこかで聞いたセリフであるが、グリーンの様子にAも笑みが零れる。
「お、笑顔が見えてきたな。うん、唇の色も戻ってきてるな」
グリーンがAの顔を見て安心したように息をつく。
「しっかしなあ、A、お前スゲーよ！レッドと互角に渡り合うなんてよ」
「そんな、恐れ多いです」
「いやいや自信持てって。レッドは一度チャンピオンの椅子にも座ってる。というかこんなところに引きこもってなきゃカントーリーグの頂点で戦ってたはずの男だ。お前はチャンピオンと互角の勝負を繰り広げてたって認識でいいと思うぜ俺は」
「そ、そうなんですね……ありがとうございます」
バトルを専門にしているわけではないが、今までの経験が今の自分に生きていると言ってもらえたようでなんだか嬉しくなる。
「レッドも楽しそうだったしな。久しぶりに楽しそうな顔のレッドを見たぜ」
「……」
レッドは相変わらず何も言わないが、その口角は上がっているようにも見える。
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作者名：リトルポム | 作成日時：2022年4月17日 19時
