太宰治に成り変わったんだが《文スト》

４１話 ページ44

『………はは、ふざけないでくれ給え。
ポートマフィアの私が、組織を裏切って君のもとへ？有り得ると思ったのかい？』


｢貴女は美しい、そしてその素晴らしい頭脳は、より良き世界を創るのに必要なのです。

それに、貴女なら有り得ると思ったわけは＿＿＿＿｣



『………ｯ、君は何を云いたいんだい？私は太宰、太宰Aだ。』





貴女は、この世界の本当の住人では無いでしょう？




その言葉に、酷く動揺してしまうが、私はあくまで平静を装う。


『くだらない事を云うためだけに此所に来たのなら、早く出ていくと良い。』



｢ククッ………連れない女性ですね。流石最年少幹部様だ。しかし、我々はまた会い見舞えることになるでしょう。
そのときに善い返事を貰える事を、期待しておりますよ、太宰さん。｣


次の瞬間。


ドストエフスキーの姿は室内から、完璧に消えていた。
　

彼の残していった言葉が、重く自分にしがらみつくのを感じて、思わず膝を落とす。


彼の男は、気が付いていたのか。


私が他の世界の人間だと云うこと。


『…………知略と狡猾の権化。…………ははっ、らしくもなｧ………』


カタカタと震える身体を抱き締めて、私は弱々しく呟いた。

私は、太宰治の様にはなれない。


それでも。




『…………私は…………』


この世界で、物語を紡ぐんだ。

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