太宰治に成り変わったんだが《文スト》

２６話 ページ28

ドサリと何かが地面に叩き付けられる。



男の頭を撃ち抜いた弾丸は、見事に急所を貫いていた。


そして其を放ったのは。


『その程度の精神攻撃で病むなんて………まだまだなんじゃないかい………中也………』


消炎の立つ拳銃を震える足で支えながら、立っている太宰。


しかし直後、そいつの体はグラリと傾いてしまう。


｢太宰ｯ！｣


俺は固まっていた身体を無理矢理動かして、倒れていく太宰を何とか抱き止めた。


太宰の肩から胸までの傷は、無理に動いたせいでまた赤色が滲み出ている。



『まったく………何処までも中也は思い通りに動くね…………でも、あの男が彼処まで強力な異能力を持ってるとは………』


｢手前は全部……分かっていたのか。｣


『まァね………けど、私に復讐を成し遂げた時が一番隙がある………だからわざと斬られたんだよ、流石に痛かったし………意識手離しちゃったけど………』


｢そして激情した俺が彼奴を殺す、すべて計画のうちだったって訳かよ………｣


『男の異能力は恐らく、敵の精神的に一番弱い部分を攻撃する能力だ…………君が自分の心の弱い部分に気が付くチャンスでもあると思ってね………中也、君はまだ自分の異能力を受け入れていないのかい？』


太宰の鳶色の瞳に、俺はなにも言えない。

『………私は、中也の髪の毛とか瞳とは……好きなのになあ……』

目をそらした太宰の、そんな不貞腐れた言葉は俺の弱い部分に染み渡った。

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