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第4話 ページ4

机の上にある携帯が充電コードを伸ばしながら震えていた。

慌ててそれに出る。


「ユナ?」

『……A? 良かった。さっきは出られなくてごめんね』

「それは大丈夫だけど……」


先ほどより雑音が多い。

通話しているユナの周りの状況が何となくだが伝わって来て、指先の感覚が薄くなっていく。

大丈夫、と尋ねるこちらの声が震えてしまった。

ユナの周りの方がもっと大変なはずなのに。

ユナはそんなこちらの心情をしっかり把握してしまったようで、優しい声であやすように大丈夫、と告げて来た。


調べなきゃ、そう思うのにネットを開くのが怖くて、画面に表示されているイースターの時に撮ったユナのアイコン写真ばかりを見つめていた。

把握した方がいいと思うのに、ユナに状況を訊く勇気もなくて、繰り返されるユナの大丈夫という声ばかりを耳が拾う。


『連絡をくれたってことは、今は家だよね?』


不思議なほど落ち着いている声だった。

掠れる声でなんとか肯定の言葉を返す。


『ギター、弾ける? 久しぶりにAの演奏聴きたいな、なんて』


わざとらしく言ってみせる彼女にリクエストを尋ねる。

何でも、と告げる彼女の好きな曲を必死に思い出しながらケースからギターを出した。

チューニングは大体で、震える指で音を奏でる。

暗い曲なんて弾けるわけもなくて、馬鹿みたいに明るい曲ばかりを選曲した。

皆に聴かせているのか、あちら側の音声もこちらに伝わって来て、折れそうになる心を必死に保った。


目を閉じて、楽しい思い出を思い浮かべる。

初めて彼女に出会った日。

好きだと伝えた日。

デートをした日。

手を握るのも難しくて、差し出したかった右手を、ずっとパーカーのポケットに入れていた。

不安で泣きたくて、でも言葉が見つからなくて慰め合ったこともある。

彼女の決意を聞いた日。

アメリカに行くと伝えた時も、優しく笑って許してくれた。

久しぶりの韓国でクリスマスを祝って、イースターでは彼女の来訪に驚いて。


少しずつ乗せ始めた歌声は、今までになく震えていて。

でも誰も下手くそだとは言わなかった。


『A、ありがとう。私のお願いを聞いてくれて』

「ヌナのお願いなら、なんだって叶えるよ……」

『Aは私たちの中で最高のギタリストだよ』

「ヌナ、俺はギタリストじゃなくて……歴史に残るような名作を書く小説家になるんだって」


響くユナの声に、涙を堪えながら言葉を返した。

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はちうん(プロフ) - 繭さん» ありがとうございます。意識はしているのですが、たまに変な文章を書いてしまうので、そう言っていただけると嬉しいです。これからもよろしくお願いします。 (2018年3月14日 16時) (レス) id: 0891d2b9a3 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - コメント失礼します。はちうんさんの文風がすごく読みやすくて尊敬します!これからも頑張ってください! (2018年3月13日 13時) (レス) id: dba4d43671 (このIDを非表示/違反報告)
はちうん(プロフ) - KNさん» コメントありがとうございます、嬉しいです。これからもよろしくお願いしますね。 (2018年3月12日 7時) (レス) id: 0891d2b9a3 (このIDを非表示/違反報告)
KN - コメント失礼します。この作品すごく好きです。毎日チェックしてます(笑)文章がとても綺麗ですね!これからも応援してます!ファイティン! (2018年3月12日 0時) (レス) id: de585078da (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:U_hi | 作者ホームページ:http://id35.fm-p.jp/408/yuna3lone/  
作成日時:2018年2月19日 2時

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