【18-1】その優しさに ページ30
「良い例なのがドビュッシーだな。アラベスクなんかは特に─……」
静かな教室内に響く先生の声は、私の脳内に留まることなく右から左へと抜けて行く。
頭の中を占めるのは、天月くんと陽花ちゃんのこと。
それと、この間のまふくんのこと。
──私、まふくんの事ちゃんと見てるよ──
──うん、そうだよね。変な事言ってごめんね──
そう言ったまふくんの哀しげな表情が、頭から離れなかった。
きっと、私のあの返答は間違いだったんだ。
「A、またため息ついた。幸せ逃げるよ」
隣の席、一緒に講義を受けていた杏奈に軽く肩を叩かれる。
「うそ、ごめん。気を付ける」
「いや、あたしは別にいいけど……」
眉を顰め、何かもの言いたげに私を見つめる杏奈。
そんな親友にこれ以上の心配はかけないよう、私は何ともないような顔で、視線を黒板へと戻した。
しかし、どうやら私のなんともないフリは、杏奈には通用しないようだ。
「A、なんかあったんでしょ?」
「へ?」
講義が終わるや否や、私に詰め寄る真剣な表情の杏奈。
「今日は無理だけど、明日とか空いてる?話し聞くけど?」
「ありがとう……でも大丈夫だよ」
「大丈夫って顔してないじゃん」
「うん、ていうか、自分でも何に悩んでるのかよく分かんなくて」
「なに、家の事?友達関係……それとも恋愛とか?」
杏奈の言葉に思わず、テキストを片付けていた手が止まった。
それはきっと、自分では思ってもみなかった感情に気づきかけてしまったから。
「分かんない……」
「それすらも分かんないと」
「うん、変だよね」
「重症だね」
帰る支度を終え、二人揃って気難しそうな顔を浮かべながら、廊下へと出たその時。
「Aちゃん何か悩んでるのー?陽花なら今日は空いてるから、相談のるよー?」
どこからか駆け寄って来た陽花ちゃんに声を掛けられた。
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mayuri(プロフ) - スイさん» 引き込まれて下さいましたか…!本当に嬉しい限りです(T_T)まふさんにも幸せになって欲しい…作者も切実にそう思います(><)好きな人の幸せが自分の幸せだと考えた時、彼等は前に進めるのかも知れません。更新頑張ります、素敵なコメントありがとうございました! (2017年3月22日 13時) (レス) id: 2673ae7c30 (このIDを非表示/違反報告)
スイ - それぞれの複雑な感情がすれ違って、すごく引き込まれます! 天月さんも応援したいけど、まふさんも幸せになって欲しいです。どっちとでも幸せになれると思うので、後は夢主ちゃんの気持ち次第ですね笑 これからも頑張って下さい (2017年3月22日 11時) (レス) id: 77c9f3f671 (このIDを非表示/違反報告)
mayuri(プロフ) - つゆをさん» 読者さんが感情移入出来るような小説を作るのが目標なので、そう言って頂けるのは本当に本当に嬉しいです……!!作者も天月さんには幸せになって欲しいと願っています、きっともう少しの辛抱です!とっても嬉しいコメントありがとうございました!更新頑張れます! (2017年1月28日 2時) (レス) id: 2673ae7c30 (このIDを非表示/違反報告)
つゆを - 読んでいて、何度も夢主ちゃんや天月さんなどの登場人物に感情移入させられて、たくさんの感情に振り回されたお話でした。多分、この状況で一番自分の気持ちを押し殺して、辛い気持ちの天月さんには、早く幸せになって欲しいと願っています。更新頑張ってください…!! (2017年1月27日 1時) (レス) id: c0e7fa7aa0 (このIDを非表示/違反報告)
mayuri(プロフ) - 夏芽さん» 完全に表記ミスでした。ご指摘ありがとうございます、助かりました……!こんなミスだらけの小説なのに楽しく読んで下さっているとの事で心より御礼申し上げます。呆れず最後までお付き合い頂けると嬉しいです(T_T)!本当にありがとうございました! (2017年1月19日 0時) (レス) id: 2673ae7c30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mayuri | 作成日時:2016年11月4日 20時