2018年─3月22日 任務後の行動 ページ9
任務の帰り道。
今日も術式でマイキーの未来を覗いた時に見えた景色を頼りに、弟の行方を追う。
私の術式を警戒しているのかマイキーの移動手段は必ず車で、外の景色が分からないように窓にはカーテンが引かれていた。
車の乗り降りも地下駐車場や広い倉庫のような建物ばかり。
つまり、未来を見ても何処を走っているのか分からない。
だから建物の特徴を正確に捉える必要があった。
それと、余った呪力で覗ける未来はどうしても夜の数時間後の未来に限られる。
かといって、夜に日中の未来を覗くと余分に呪力を消費してしまう。
昔より呪力消費を押さえられるようになったけれど、昔と違って私は今準1級の呪術師だ。
回ってくる任務の難易度が格段に跳ね上がっている以上、任務前に多くの呪力を消費することは避けたかった。
たまの休みの日中に数時間後のマイキーの未来を覗くこともあるけれど、いつも弟は建物の中にいることが多かった。
希に外を歩いている姿が視えたとしても、その場所が何処か分からないことの方が多い。
それでも、視えた景色が知っていた場所の時は、何度か急いで向かったことがある。
今日視えたのも知っている景色だ。
反社同士の取引現場だったので、遠くから身を隠すことになったけれど、マイキーの姿を肉眼で捉えることは出来た。
けれど、無策で梵天の連中の中に突っ込むのは、いくら私が呪術師といえど危険な行為だ。
捕まれば何処かに閉じ込められるかもしれないし、最悪は命はないだろう。
それは百鬼夜行の件で懲り懲りしている。
だから、私はグッと堪えて成り行きを見守る。
暫くして取引が無事終了したのか、梵天と相手の連中が撤収していく。
その時、くるりと身を翻したマイキーに続いた春千代。
かなり距離がある筈なのに、春千代と目があった気がした。
あ、ヤバ…
そう感じたと同時に春千代が拳銃を取り出して、躊躇いもなくバン!バン!バンッ!!と連射してくる。
「ヒッ…!」と小さく声が漏れた。
この距離で隠れてた私が見えたの!?
しかも、誰かも確認せずに撃つなんて有り得ないんですけど!?
アイツ、狂ってる!
未来予測で視たとき、春千代はマイキーの隣でよくクスリを飲んでたから、きっとそのせいね!?
「誰だ!出てきやがれー!!」
そう叫ぶ春千代にゾッとした私は足に呪力を込めて駆け出すと、全速力で現場から離れた。
そんなこんなで、私は未だに梵天のアジトに辿り着けないでいた。
161人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月見 | 作成日時:2023年7月1日 13時