エマと独り言 ページ8
「エマ、お見舞いに来たよ」
エマが入院している病室へとやって来た私。
来る前に寄ってきた花屋さんで買った花を一週間前に買ってきた花が飾ってある花瓶と入れ換える。
「私、また悟に当たっちゃった……。結婚なんて、私にはムリだよねー」
「ハハハ」と自嘲気味に笑う。
せっせと手を動かして、花瓶の花の飾りに満足するとベッドの傍のイスに腰かけてエマの顔を見る。
色白の痩せた顔がそこにあって、胸が締め付けられる。
「悟と喧嘩したいわけじゃないんだよ?嫌いでもない。出来たら、なるべく長く一緒にいたい。………けど、怖いんだ」
梵天で組織のトップとして君臨しているマイキー。
いつか、上層部がマイキーの居場所を掴んだら……
反社のトップである彼の生死は問わずに呪霊を祓う、もしくはマイキーの秘匿死刑という指示が出されるかもしれない。
そしたら、きっと派遣されるのは特級呪術師の悟だろう。
「私はマイキーを失いたくない。悟に手を掛させるようなこともしたくない。だから、その時が来たら、たぶん私は悟と対立することになる。……それが怖い」
口にすると手が震える。
「それに、この前傑に捕まった時、迷惑かけちゃったから………」
私は百鬼夜行に呪術師として参加出来なかっただけではなく、結果的に傑たちに手を貸してしまったのだ。
縛りの対象が私だけならよかった。
それだったら私は傑の話を断った。
けれど、弟の命までかけられらた私は断れない。
傑は私がどうするか分かっていて、そうしたんだ。
私への罰が1ヶ月の謹慎で済んだのはどう考えても悟のお陰だった。
これ以上、悟の負担になりたくない。
「……好きだからこそ、早めに離れるって選択肢もあるよね?」
問い掛けても妹から返事は返ってこない。
ただ虚ろな彼女の瞳は天井を映すだけ。
エマだったらどう答えてくれるだろう?
ずっとドラケンが好きだったエマ。
彼女は放ったらかしにされてもめげなかった。
悟に迷惑を掛けないためにも、悟と別れた方が良いって分かってる。
でも、私は欲張りだからマイキーも悟も……どちらも手放したくない。
傑の手は掴み直すことが出来なかったから。
今度こそ……!!
ガバッと立ち上がる。
「決めた。私、最後まで足掻く!マイキーを家に連れ戻して、そしたら悟と相談して呪いも何とかする!!」
エマの前で口に出して宣言する。
“A、頑張れ!”
エマが応援してくれているような気がした。
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作者名:月見 | 作成日時:2023年7月1日 13時