両面宿儺 ページ34
私の背中ビンタから逃れた悟が呪物を食べたという彼をじーっと覗き込む。
「ははっ、本当だ。混じってるよ。ウケる」
「悟、悠長にしてる場合じゃないわよ」
今は元の人間の意識のようだけれど、いつ宿儺と入れ替わるか分からない。
両面宿儺。
奴が現れたら私や恵はタダでは済まないだろう。
私の言葉に「それもそうだね」と頷いた悟が「体に異常は?」と彼に尋ねる。
「特に…」
「宿儺と代われるかい?」
「スクナ?」
「君が喰った呪いだよ」
「あぁ、うん。多分出来るけど」
「じゃあ、10秒だ。10秒経ったら戻っておいで」
ぐっと体を解して動く準備をしだす悟。
「嘘でしょ……?」
今まで一般人で呪いなんて知らない筈の子が特級呪物を取り込んで、意識を保っている事自体が信じられない事なのに、自分の意志で宿儺と代わる!?
「待って!そんな事して戻れなくなったらどうするの!?」
あの子は事の重大さをわかっていない。
それなのに悟もなんて提案してるのよ!
「大丈夫。僕、最強だから」
ニッと笑う悟。
「そういう問題じゃないってば!」と説得する私を他所に「恵、これ持ってて」と喜久福が入った袋を投げた。
「そんなに心配なら覗いて視れば?」
「っ」
まぁ、それもそうだ。
ゴクリと息を呑んで30秒後の悟の未来を覗く。
そこには気を失った彼を抱えている悟の姿。
表情を見る限り、男の子は気絶しているようだった。
「ね?大丈夫そうでしょ?」
悠長に尋ねて来た悟の後ろから、先程の彼が飛び込んでくる。
アザのような模様が体に刻まれている事から、宿儺と入れ替わったようだ。
恵が「後ろ!」と叫んだ時には悟は瞬時に移動を終えていた。
「生徒と恋人の前なんでね。カッコつけさせてもらうよ」
驚いた宿儺が振り返ったと同時に悟が腕を捕まえて、空いている手でその首の後ろに拳を入れた。
ダンッと投げ飛ばされた宿儺が即座に起き上がる。
「全く、いつの時代でも厄介なものだな、呪術師は」
ビキビキと宿儺の体の筋肉に力が入って盛り上がる。
「だから、どうという話でもないが」
宿儺が腕を振ると力の塊が屋上の床をえぐった。
「7、8、9」と悟がカウントダウンをする。
無限を発動していた悟の手前で床をえぐった瓦礫がピタッと止まっていた。
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作者名:月見 | 作成日時:2023年7月1日 13時