いざ、仙台へ ページ32
「そんなことより、アンタ本当にこれからかわいい生徒を助けに行く気があるの？」
ジトッとした視線を悟に送る。
上層部との話し合いのあと、1件の任務を片付けてきた悟と共に16時頃、新幹線に乗り込んだ。
その悟は席に着くなり、駅で買ってきたらしい甘いものを広げている。
「勿論。その為にもエネルギー補給は大事だよね。Aも食べる？」
そう言いながら、今まで食べていたプリンをスプーンで掬って私の顔の前に持ってくる。
「はい、アーンは？」
「………。」
少しぐらい緊張感があってもいいと思う。
昔の私なら間違いなく恥ずかしくて「誰がそんな事するかぁ！！」なんて言って回避していたんだろうな。
でも、昔からこういうの……少し、ほんの少し憧れていた。
思い切ってパクッと口にすると口内に甘さが広がる。
私の口元を離れたスプーンは次のプリンを掬うと悟の口の中に入っていった。
そう言えば、初めて悟と間接キスしたのは何時だったかな？
確かジュースを差し出されて無意識に飲んだのが初めてだったはず。
あの時は……………
「A、今からニ時間後の恵の様子はどう？」
昔の事を思い出していると悟がプリンを食べながら尋ねてきた。
「待ってて」とだけ答えて恵の未来を視る。
何処かの病院にいる恵の姿が視えた。
見たことない高校生ぐらいの男の子の後を付けているようだ。
見たままを悟に伝えると「じゃあさ、向こうに着いたら先にお土産見ようよ」などと提案してくる。
「………いや、先に恵の所に行かなきゃ」
「Aの未来予測で問題ないなら大丈夫でしょ」
「………アンタ本当にかわいい生徒を助けに行く気がある？」
「勿論。あと、Aと仙台旅行を楽しむ気もあるよ」
「私と………せ、仙台旅行？？…………って！えっ！？」
まさか、その為に上層部を説得した訳じゃないよね？
え？え？？
ぐるぐる考えていると悟がニッと余裕の笑みを浮かべる。
「大丈夫。僕、最強だから」
「そういう問題じゃないからっ！」
浮ついた気持ちを持ち合わせていた悟には驚いた。
けれど、私のこと考えてくれていた悟の気持ちが少し嬉しかった。
悟は私を一番に考えてくれているのかも。
そう思っても、私は硝子に言われた“悟とちゃんと話す件”を未だに言えずにいた。
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作者名：月見 | 作成日時：2023年7月1日 13時
