上層部の連中 ページ31
翌朝、悟は上層部に事情を説明しに行った。
数分後、私まで呼び出しを喰らう事になる。
「佐野A、特級呪物が受肉した未来予知を視たというのは本当か?」
「はい」
答えると場がざわつく。
「それはどの特級呪物だ!?」
「現在進行中の任務に特級呪物の回収ががあったな。まさか………!?」
「だからと言って何故お前が現場に行く必要がある?」
「そうだ!お前の術式を外部に悪用されるリスクだって遥かに大きいのだぞ!!」
「大体、そんな暇と呪力があったら未来予測で早くお前を狙っている呪詛師を明らかにしたらどうだ?」
老人連中が好き勝手にあれこれ話し出す。
最後の発言に関しては、私の術式のこと知っていて……呪力消費半端ないって知っていて自分に未来予測使えってか!!
段々とイライラが募ってくる。
「じゃあ、誰か私に膨大な呪力を授けくれるんですか?それとも、常に呪力が枯渇した状態でも良いと?それなら幾らでも自分の未来を視ますよ?まぁ勿論、そんな事ができるんならですけど??」
にっこり笑みを貼り付けて告げると、老人連中が途端に黙りを貫く。
それを見計らったように悟が私の肩に優しく手を置いた。
「もう言いたいことがないなら、Aは僕と仙台に向かいます。彼女の未来予知で視えた未来が本当に起こるなら、それを回避するためにも彼女の力が必要だ。……良いですよね?」
ジロリとアイマスク越しに悟が上層部の連中を睨み付ければ、強く反対する者はいなかった。
*****
「全く、年寄連中には困ったもんだねー。文句は言うけれど、責任は負いたくない。オマケにAのこと煙たがるクセにいざという時は術式を独占したがる」
「まぁ、今に始まったことじゃないけどねー」
ずっと、私の術式は大した事ない術式だと思われていた。
だから、2級に上がるまではかなり時間がかかった。
けれど、傑が呪詛師に認定されてから、手のひらを返すように上層部から術式を使用して欲しいといった名目の呼び出しが増えた。
そしてあっという間に準1級に上げられた。
本来は特級になってもおかしくなったらしい。
何せ未来が覗ける術式だから、国家転覆だって不可能な話ではないからだ。
けれど、術式を理由に私の階級を上げると、それだけ呪詛師に狙われるリスクが跳ね上がると判断されたらしい。
あの時の出来事を思い出すと、今でもギュッと胸が締め付けられる。
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作者名:月見 | 作成日時:2023年7月1日 13時