タケミっちの前で ページ27
喧嘩を始めた私たちにタケミっちが「お二人共落ち着いて」と、声をかけながらどうしたらいいのか分からず困惑しているようだった。
「もう放っといてよ!」
「えー?何々?構って欲しいって?」
「そんな事、一言も言ってない!」
「仕方ないなぁ。Aから言ってきたんだから、この前みたいにビンタはナシね」
「は?」
ビンタ………?
悟の言葉に眉を顰める。
この前のビンタといえば、私が呪詛師に狙われてると分かった日に、悟に人前でキスされて………
両肩を掴まれた感触にハッとすると悟の顔が近付いていた。
「なっ!なななっ!何考えてんのよっ!!タケミっちの前で!!!」
ブワッと顔が熱くなる。
即座にグッと悟の体を押して私は抵抗する。
最近の悟は一体、何なの!?
構って欲しいのは悟の方じゃない!?
「へぇ〜、タケミっちの前じゃなかったら良いんだ?」
「この、バカっ!!」
ゲシッと足で悟を蹴った。
*****
「……と、まぁ冗談はこのぐらいにしておいて。………話の続きなんだけど」
悟との喧嘩が一段落した所で話を戻す。
私たちのやり取りを見ていたタケミっちは心なしか顔を赤くしながら、気まずそうに「何でしょうか」と聞き返している。
「君、本当にマイキーくんを探すつもり?」
一気に真剣な表情に戻った悟が低い声で尋ねた。
「はい」と答えたタケミっちに「それは辞めたほうがいい」と即答する。
「どうしてですか?」
「恐らく、彼の呪霊は特級だ。対峙することになれば、命の保証がない」
「え……」とタケミっちが言葉を失う。
「これは、僕がAにマイキーくんを探すことを止めている理由の一つでもある。特に君は僕らと違って一般人だから、呪霊が見えない。いつ出てくるか分からない呪霊に気付くことさえ不可能だ。君に勝ち目はないよ」
「でも!」
「でもじゃない。タケミっちはもうすぐヒナちゃんと結婚するでしょ?マイキーくんのことは忘れて幸せに成るべきだよ」
言い返す言葉が見つからないのか、険しい顔をしたタケミっちは下を向いた。
*****
【おまけ】
「所で、タケミっちたちはどうやってここまで来たの?」
悟の言葉にタケミがスマホを取り出す。
「マップです」
「え?」と悟が固まる。
「私もさっきびっくりしたんだよねー。高専がマップに載ってるみたいで、麓までなら一般人でもたどり着けるっぽいよ」
「マジで?ウケるねー」
【おまけ】─終─
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作者名:月見 | 作成日時:2023年7月1日 13時