きよちゃんへお土産 ページ3
ブーケはヒナの手元に落ちてきた。
タケミっちとの結婚式も迫っていることだし、当然の結果と言えばそうだろう。
場が解散になった時、「あのさ………」と、タケミっちがドラケンと千冬に尋ねる。
「マイキーくんは何処にいるの?」
「………。」
一番聞かれたくない質問だった。
私はタケミっちに嘘を付かなくちゃいけない。
「マイキーは今、海外で飲食店の経営をしてるんだ」
「大成功してんだぜ!今日も本当は来る予定だったんだけど、急に仕事がはいったってよ」
ドラケンと千冬が答える。
「すげぇー!そうなんだ!!」と驚くタケミっちに「凄いでしょ!」と私は明るく振る舞う。
「マイキーもオマエな会いたがってたぜ!」
ニッと笑ってドラケンが伝える。
嬉しそうに笑うタケミっちに気付かれないように、私とドラケンと千冬は視線を合わせると小さく頷いた。
*****
「きよちゃーん!はいっ、お土産〜!!」
高専に戻った私は引き出物の美味しそうなバームクーヘンを差し出す。
「佐野さん、お帰りなさい」と呟いたきよちゃんが、いつもと違う服装の私をまじまじと見る。
「……そう言えば、ご友人の結婚式は今日でしたか。…で、これを私に?」
「うん。その代わり頼んでた件、ちょっと急いで欲しいんだけど、あれからどうなった?」
尋ねた途端、きよちゃんの顔が「えっ」と固まる。
「つまり、このバームクーヘンは私を急かすための………?」
「うん。で、どう?」
再び尋ねると、きよちゃんがクイッとメガネを掛け直す。
「あのですね、佐野さん。私は情報屋じゃないんですよ。と言うか、これ上層部にバレたら……」
「も〜っ、分かってるって!!」
バシバシときよちゃんの背中を叩く。
「痛っ!ちょっ!痛いです!!」
「あぁ、ごめんごめん」
“この人、絶対加減分かってない!!”
きよちゃんがそんな事を思っているとは露知らず、私はきよちゃんを「ほらほら」と急かす。
「まだ確かなことは分かっていません。佐野さんが未来予測で見たと言う景色を参考にアジトとおぼしき場所の候補を上げているところです」
「アジトねぇ〜まぁ、幾つか持ってるだろうけど……」
呟いたとき、ドアが開いて悟が入って来た。
「あれ〜?A帰ってたの?」
「ついさっきね」
「そのドレス似合ってるよ」
結婚式帰りの私を見て悟が言ってくる。
例えお世辞でも好きなヤツに似合ってるなんて言ってもらえると嬉しい。
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作者名:月見 | 作成日時:2023年7月1日 13時