ドラケンの思いやり ページ20
悟の言葉に「は………？」 とドラケンが目を丸くする。
「任務の関係でエマの面倒見れねぇとは聞いてたけど……まさか、それが理由か？」
「えぇっと………」
返す言葉が見つからない。
目を泳がせていると「はぁぁぁ」と、ドラケンの深いため息が聞こえた。
「ったく、お前もタケミっちも少しは自分のこと優先して考えろ！！」
「………はい」
ドラケンに怒られてしまった。
その時、「ただいま」と買い出しに出ていたイヌピーがお店に帰って来た。
「あれ？A？……と五条？来てたの？？」
「まぁね。でも、もう帰るところ」
悟が勝手に返事をする。
「えぇー、イヌピーとも少し話を──」
「いや、お前はもう戻れ」
私が言いかけた時、ドラケンが遮る形で告げた。
「……五条さん、Aをよろしくお願いします」
言いながらドラケンがスッと頭を下げた。
「えっ！？ちょっと！ドラケン！？」
驚く私なんて気にも止めず、ドラケンが言葉を続ける。
「Aにはこれ以上、辛い思いさせたくないんで、頼みます」
「分かってるよ。僕も同じ思いだから」
それを聞いて、やっとドラケンが顔を上げる。
「ふ、二人とも……やめてよ………」
何この空気。
「そう言うわけで、Aは暫く自由に動き回れないからさ、今度は君たちから高専にAを尋ねてきてやってくれる？その時は、高専まで僕が案内するからさ」
「そう言うわけって？…ってか、高専って？」
話の途中で帰って来たイヌピーは何のことか分からず困惑していた。
「じゃあ、僕らはそろそろお暇するねー」
悟はスッと私の手を掴むとそのまま歩き始める。
「えっ、待って。まだイヌピーと話してない！」
抗議すれば「それはまた今度」何て返ってくる。
「何処の誰に狙われてるか分からないんだから、巻き込みたくないでしょ？」
「…っ！」
二人に聞こえない小さな声で、言われてしまえば、何も言い返せなくなる。
分かっている。
だから、こうして任務く帰りに短時間だけお邪魔しているのだ。
「…ドラケン、イヌピー……またね」
小さく手を振ると、二人も振り返してくれた。
店を出ると私たちは真っ直ぐ高専へ戻った。
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作者名：月見 | 作成日時：2023年7月1日 13時
