出現 ページ12
「これは……地下に続いているのかしら?」
「暗くてよく見えませんね。……鵺に様子を見に行かせましょうか?」
「いや、僕がリカちゃんに頼………」
優太が言いかけた時、突然目の前に一体の呪霊が現れた。
穴の真上に浮いているソイツはサナギのような体を持ち、大きな目玉がこちらを見ている。
今の一瞬で穴の下から出てきた!?
「っ!」
速い!!
私が刀に呪力を込めて飛び掛かると同時に、未来予測で恵を視る。
「リカ!!」
「鵺!!」
同じタイミングで二人も動いていた。
そして視えたのは、目の前にいるサナギの呪霊が私たちの攻撃が入る前に、そこから飛び上がって天井に張り付くと、体から糸を吐いて私たちを拘束する姿だ。
「備えて!!糸の攻撃がくる!!」
早口で言いながら、体に呪力を纏ってガードの態勢に入る。
サナギが目の前から消えて、私は大穴をジャンプで跨ぐように反対側の床に着地すると糸から逃れるように更に飛び退く。
次の瞬間、シュシュッ!!と呪霊からあちこちに糸が発射される。
恵は鵺の羽の下に体を隠し、優太は走って次々打ち出される糸から逃れつつ、呪霊との間合いを探っていた。
糸の攻撃が中々止まない。
キリがないわね!
「Aさん!少し離れて!!」
優太の叫び声に彼を見る。
その顔に棘と同じ蛇の目と牙の模様が浮かんでいた。
攻撃のタイミングを窺っていたけれど、意図を理解した私はその場から距離を取る。
「爆ぜろ!」
呪言を受けた呪いがボンッ!と爆発した。
爆風と共にゴォッと音を立てて燃える呪霊。
その傍にあった糸も焼けて灰になっていく。
当たり前だけど、今の棘みたいな戦い方だ。
ここまで呪言を使いこなすなんて………
優太は本当に凄い。
特級に返り咲くだけの事はある。
ゴホッ!と恵がむせた。
「恵、無事?」
鵺の羽の下で体を隠していた恵は糸の攻撃が続いていた間、ずっと動けないでいた。
近寄ると糸まみれにされた鵺の下から恵の声がする。
フッと鵺の形が崩れた。
術式を解いたらしく、途端に鵺に掛かっていた糸が恵の頭上に落ちてくる。
「うわっ!最悪だ………」
ベタベタと恵の体に纏わりつく糸。
「術式解く前にそれくらい予想しなさいよ。意外と世話が焼けるわね」
グイッと恵に纏わりつく糸を掴んで体から引き離していく。
「ハハハ……僕も手伝うよ」
そうして優太と一緒に恵を糸から救いだすと、一仕事終えた私たちは床に座り込んだ。
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作者名:月見 | 作成日時:2023年7月1日 13時