2005年─12月25日 聖夜の任務 ページ40
ふわりと雪が舞う中、降り積もった道を歩く。
「こんな日に限って寒い中、雪道を歩かされるとはな」
悟の言葉に「そうね」と頷く。
15分前までは補助監督が運転する車に乗っていた。
けれど、雪道で立ち往生した車があって渋滞に巻き込まれた為、私たちは歩いて目的地を目指すことにしたのだ。
正道から頼まれた今日の任務。
本当は傑との任務だったんだけど、傑が悟を推薦してそれが通ったのだ。
恐らく傑は私たちに気を遣って悟を推したに違いない。
一昨日まで悟は遠方での任務に呼ばれて5日間高専を留守にしていた。
こうして悟と並んで歩くのは久しぶりだった。
ちらりと隣の悟を見れば、鼻の先を赤くしていて、あははっと笑う。
「悟、鼻赤いよ。トナカイみたい」
言えば恥ずかしそうに鼻を押さえる。
「お前も似たようなもんじゃねぇか」
「え?本当に?…まぁ、寒いからね」
見えないから自分ではよく分からない。
デートの日以降、私と悟がいがみ合いことは減った。
それは、お互いに気持ちを意識したからかもしれない。
私はたぶん悟が好きだ。
焼きもちを自覚したあの日、そう感じた。
そうやって、気付いた自分の気持ちを直接口にしたことはないけれど、傑や硝子によって代弁されていることもあって、恐らく悟は薄々感じているんだと思う。
悟が好きかもしれないと、本人に伝えるべきなのかもしれないけれど、“かもしれない”なんて曖昧な表現はきっと困らせることになるだろう。
だから、この気持ちはハッキリ分かるまで言わないと決めた。
「着いたな」
「うん」と返事をして建物を見る。
宇田川キリスト教会。
ここに準2級の呪霊が現れるという。
「サッと終わらせて、早く帰りましょう。そしたら今夜は歌姫先輩たちとクリスマスパーティーよ!」
悟が返ってきたこともあって、昨日、話し合って急遽開催することになったクリスマスパーティー。
今日は任務がない歌姫先輩と硝子がチキンやケーキを準備してくれる予定になっている。
「張り切りすぎて怪我すんなよ?」
「大丈夫、大丈夫!」
ルンルンと教会へ続く階段を上る。
まだ補助監督が来ていないので、自分たちで帳を降ろすと中に入った。
まず礼拝堂に現れたのは3級の雑魚だった。
「話と違う…」
コートの下に隠していた刀を抜きながら呟く。
「あぁ。どうやら、この奥にいるらしい」
六眼の悟が言うのだから間違いないようだ。
「じゃあ早く終わらせましょ」
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作者名:月見 | 作成日時:2022年11月8日 22時