出迎え ページ29
準備を終えて部屋のドアを空けると、目の前に悟が現れた。
「っ！わっ！び、吃驚したぁ〜！！」
待ち合わせは高専の校門前だったから、こんなところで鉢合わせるとは思っていなかったのだ。
悟の方も驚いたのか、一瞬肩が跳ねてスッとそっぽを向かれた。
「アンタ、人の部屋の前で何してたの？来てたんならノックぐらいしたらどう？」
「今、来たとこだったんだよ…」
どこか気まずそうにボソッ呟いた悟。
その時、後ろからツンツンとエマにつつかれた。
たぶん、今の聞き方はよくないと言う忠告だろう。
「あ………そ、そう？」
くそぅ。
何で悟にこんなに気を遣って話さなきゃいけないんだ。
そう思いつつ、気になっていた事を訪ねる。
「なんで部屋まで来たの？」
「傑が迎えに行けってよ」
「言われて来たんだ？」
ふーん？と首を傾けながら悟を見る。
「悟って、そう言うところ意外と素直だよねー」
呟くと「そうでもない」と声がした。
直後、悟の後ろから傑がスッと現れる。
「本当はお洒落させようとしたんだけど、悟ときたらいつも私服で着てる黒服しか持ってなくてね。貸してやるから着てけって言ったんだけど…」
呆れた様子の傑がため息を付く。
確かに、悟はいつもの黒ずくめの服にサングラスだ。
けれど、高身長な悟はそれすらもオシャレに着こなせてしまうらしい。
それから、どんな手を使ったのかは分からないけれど、顎の腫れは跡形も無くなっていた。
「いつもの服でオシャレに見えるヤツが羨ましすぎる………」
思わず呟くと、そっぽを向いたままの悟から「そりゃどーも」なんて返ってくる。
「あの、今日はAをよろしくお願いします」
エマが私の後ろから悟に声をかけた。
それに「あぁ」と頷くと「ホラ、準備できたならさっさと行くぞ」と言われる。
「あ、うん……」
なんか、変な感じ………
そう思いながら、廊下に出る。
「じゃあ、私はエマを家まで送り届けてくるよ」
エマの傍に立った傑がそう言うと、私たちにニコッと笑いかけながら手を振る。
「二人とも楽しんでおいで」
“早く行け”
傑の顔がそう物語っていた。
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作者名：月見 | 作成日時：2022年11月8日 22時
