2005年─12月10日 妹と高専寮 ページ28
翌日。
「はいっ!出来た!!」
鏡の前に映る私は別人のように見えた。
エマは満足そうに私の姿を眺めてルンルンだ。
「Aがオシャレしてる姿久しぶりだね」
「うん…」
正道と会って呪術の特訓をするようになってからは、動きやすい服を着るようになったし、真にぃが居なくなってからは出掛ける機会も減ったから尚更だ。
昨日、傑が任務帰りの送迎でエマを高専の寮に連れて来た時は兎に角驚いた。
そんな私に「当然だろう。Aのコーディネートを頼んだからね」と傑は当たり前のように答えた。
傑とエマはまだ会ったことがなかった筈なのに。
『エマ、知らない人に着いてっちゃダメでしょ!』
『何で?傑は知らない人じゃないよ?だって昼間に電話で話したんだもん』
そう言われて、もはや何も言えないでいると『そんなことより、ここがAの暮らす寮なんだね〜』とテンション高めのエマ。
次第に硝子や歌姫先輩がやって来て、歌姫先輩とエマが会うのは久しぶりだったから、話が盛り上がって、そのままお泊まり会の運びとなった。
昨夜はお菓子やらジュースやらを持ち寄って、夜遅くまで楽しんだ。
だから少し眠い。
「ウチ、今日みたいな日がくるのずっと楽しみにしてたんだ」
独り言のように呟かれたエマの言葉に「え?」と彼女を振り返る。
「真にぃが居なくなってからのAは、代わりにウチらのこと守ろうと呪術の稽古を頑張ってくれてたから」
「…エマ」
「Aは真にぃにしか甘えたことないでしょ?だから、本当は甘えたい時もあるのに無理してる感じしてたんだ」
無理か………
甘えたいとか、そんなつもりもなかった。
ただ真にぃがいない分、エマやマイキーを守りたくて必死に稽古してたのは確かだ。
「いや、だからって悟じゃなくても…」
「とかなんとか言って、悟と一緒にいるときのAは楽しそうだったよ?それに昨日の女子会で聞いた話では、二人は息もピッタリみたいだし!」
「あ、だからそれは違うんだって…!」
昨日、硝子が私と悟の声がよく被る話を持ち出してきた。
いつもは傑に突っ込まれるんだけど、珍しく硝子に言われてしまったのだ。
「そう言えば、ウチが武蔵神社で悟に初めて会った時もそうだったね〜」なんてニヤついている。
「とにかくさ、色々思うこともあるかもしれないけれど、純粋に今日のデート楽しもうよ、ね?」
嬉しそうに笑いかけてくる妹に私はそれ以上言い返せなかった。
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作者名:月見 | 作成日時:2022年11月8日 22時