好きとは ページ22
「本人から直接聞いた訳じゃないけど、Aの予想通りだよ」
教室の中、悟が単独任務に呼ばれて不在の間に今朝の硝子との会話の件を傑に話した。
「いやいや！普通好きな子には優しくするもんじゃないの！？」
タケミっちとヒナのカップルみたいにさ！
「仮に冷たくしたとしても、こう然り気無い気遣いとか有るもんじゃん！？」
ほら、ドラケンとエマみたいに！？
「みんながみんなそうじゃない。好きだからこそあんな態度を取る奴もいる。特に、悟はお坊ちゃんだからね。多少意地を張ってるんだろう」
「…………なにそれ……」
私には分からない。
普通、好きな子には優しくするものじゃないの！？
え？
もはや好きって何？
「傑、Aが固まったぞ」
「Aにこの件を伝えるのはまだ早かったかもしれないな」
そんな二人の会話に私はハハハと乾いた笑いが溢れる。
「………恋愛って難しいんだね。私には分からん！！」
世の中のカップルがこんな難解な思考戦の末に付き合っているのだとしたら、本当にすごいと思う。
「一応聞くけど、Aは好きな人はいるのかい？」
「………それって、恋愛的な意味で？」
尋ね返すと、傑がホッとしたような表情をする。
「流石のAもそれは分かるか」
「ちょっと！バカにしないでよ！私だってLIKEとLOVEの意味ぐらい分かるわ！！」
「で？いるの？……まぁ、言いたくなかったら言わなくていいけど」
硝子が首を傾けて聞いてくる。
それに対して「…んーと………」と口ごもって、私は思いきって告げることにした。
「いない。…と言うか、いたことがないからソレがどんな感じなのか全然分かんない」
何となくエマやヒナちゃん、タケミっちを見ていると私がマイキーや圭介、隆を大事に思う気持ちとは違うことは分かる。
マイキーは家族で弟として好きだし、圭介は幼なじみだし、隆は友だちみたいなものだ。
エマがよくドラケンに送っている視線は、そんなのとは違って、もっと情熱的なものだった。
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作者名：月見 | 作成日時：2022年11月8日 22時
