ここに来た理由 ページ17
「おい優太!!大丈夫か!?」
「高菜!!」
「しっかりしろ優太!!」
新宿で悟に転送された術師とパンダ、それから初めて見る女の子が乙骨を囲う。
どうやら高専の生徒らしい。
それにしてもあのパンダは何者だろう?
遠くの崩れた建物の陰から私はこっそり様子を見守る。
傑は体を引きずって何処かへ消えたし、乙骨は目を覚ました。
私が心配せずとも大丈夫だろう。
『失礼だな、純愛だよ』
あの時の乙骨の真剣な目が印象的に残っている。
そう思える相手が居ることは、幸せだろうな………
チラッと悟の顔が脳裏を過る。
「よぉ、A。テメェ、生きてやがったか」
突然聞こえてきた聞き覚えのある声にハッとする。
あぁ、そうだ。
私が結界で侵入を悟られるかもしれないリスクを犯してまで、高専に走ってきた理由を思い出す。
バッと振り向こうとした時、パン、パァン!と破裂音が響いた。
「ッ…、!!」
腹部に猛烈な痛みが走って、ゴフッと血を吐く。
「……さ、んず…!」
ゆっくり振り返って、ガクッと膝を付くとうつ伏せに倒れた。
「ンだよ、昔みてぇに春千夜って呼んでくんねぇのか?」
力を振り絞って顔を上げる。
「アンタ…でしょ、私から弟を……遠ざけ、たの」
「あぁ。マイキーから聞いた。オマエには俺らに見えねぇモンが見えるらしいな!最初は半信半疑だったが、夏油ってヤローが声掛けてきてよぉ」
ゼェゼェと息を乱す私を見下すような目で三途が見る。
「A!!」
遠くから私を呼ぶ声と足音がする。
「胡散臭いヤローだったが、オマエも邪魔だっからな!ノってやったんだ」
「な、んで………?」
「そりゃ、オマエも粛清するよう言ったのはマイキーだからだ」
「ッ!?」
三途の言葉に愕然とした。
今まで守りたいと思っていた家族に、こんな形で裏切られるなんて思ってもみなかったから。
足音がどんどん近くなって、三途が後ずさる。
「王は誰にも渡さねぇ」
それだけ吐き捨てると、持っていた拳銃をもう一発打って走り去った。
放たれた玉は私を通りすぎて背後に流れていく。
「A!!」
私の前で足音が止まると、グイッと抱き起こされた。
目の前に焦った悟の顔が映り込む。
「…っ、悟……。………あぁ、私、夢見てるみたい、だ…」
へへへと笑うと複数の足音が近付いていることに気付く。
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作者名:月見 | 作成日時:2022年11月8日 22時