9話 ページ11
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一通り確認し終わったグルッペンさんは馬車の運転手にも何も仕掛けていないか念入りに聞き出していた。その時、封筒に入ったなにか分厚いものが見えた気がしたけど私は何も見ていない。いいね？
それも終わったグルッペンさんはようやく馬車を出すように指示をしてゆっくりとソファに腰掛けた。まだ少し肌寒い季節なのを気遣ってか慣れたようにひざ掛けをかけてくれた。カーテンもちゃんと占められている。前に運転手さんがいるけど、普通に会話をすれば聞こえないような距離でほぼ二人だけの空間。
ひざ掛けの下に置いていたてを恋人繋ぎのように一本一本大事握られて急に手の存在感が増した。意識がそこにしか集中しなくてグルッペンさんの力が緩んだり強まったり。ただそれだけなのにドキドキする。彼のいる右側が妙に暑い。
｢嬉しいもんだな。こうやって出掛けられるのは。｣
聞かれないためか控えめな声。こうやって、に含まれているのはなんなのか。私服で、か何も気にせず、か。それとも私と二人で、か。
ガタガタと不安定な道によって右側に傾いた身体。ぽすっとグルッペンさんの肩に頼ってしまってすぐに体制を戻した。うぅ、恥ずかしい……。
繋いでいる手の甲を指でなぞるようにくるくるとされてくすぐったくて笑いそうになる。手を離したかと思えばツーーと爪でなぞられてゾワゾワする。反応を抑えるのに必死な私を見て楽しんでいるのかクッとこらえる笑い声が聞こえる。
｢総統、やめてください。｣
｢くすぐったいか。｣
｢くすぐったいです。｣
そうか、とクツクツ抑えたような笑い声。この空気は、なんというか脳内にいる誰かが甘ーーーい！と叫びそうなほどで普段の私たちじゃ絶対に流れない、流すことが出来ないもの。
総統、と話しかけようとしたら途中で私の唇に指が当てられ阻止された。ちとキザすぎやしないですか。
｢グルッペン。せめて二人の時くらいそう呼んでくれないか。｣
照れたような柔和な笑顔でそういった彼に心臓をギュンっと掴まれた。いつも、脳内で呼ぶ時はグルッペンさんだけど口に出す時は何故か総統という役職名になってしまう。それは照れくささから来ているものなのか私にはわからないけど既に癖になっていた。
｢グルッ、ペンさん。｣
｢長いな。｣
｢グル、さん？｣
口の中で不慣れに転がった名前に気恥しさと、こんな距離を縮めてしまって大丈夫なのか、という不安がぐちゃぐちゃに混ざる。
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涙月歌(プロフ) - 急かさせる気はないんですけど、もう続きは投稿されないのですか？ (2021年9月29日 17時) (
レス) @page37 id: 2754c783a2 (このIDを非表示/違反報告)
雨神朔夜(プロフ) - 更新のたび夢中で読ませていただいております……主人公の心情が大変良いです……陰ながら応援しております……！ (2018年7月16日 21時) (レス) id: 770040a5d8 (このIDを非表示/違反報告)
叶奈美(プロフ) - めちゃめちゃすきです(語彙力) 地位の差故に自覚してはいけない恋心にきゅんときます。はあーー、占ツクも捨てたもんじゃありませんね…。あー、すき(語彙力) (2018年7月16日 20時) (レス) id: 3e526d3335 (このIDを非表示/違反報告)
からわさ(プロフ) - ちゃむさん» コメントありがとうございます！！ありがたいお言葉です。これからも頑張りますのでよろしくお願いします！ (2018年5月26日 11時) (レス) id: 4be6bd897c (このIDを非表示/違反報告)
ちゃむ(プロフ) - コメント失礼します。文の構成がお上手で雰囲気も好みで大好きです！これからも頑張ってください。 (2018年5月26日 0時) (レス) id: eca4574b7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：からわさ | 作成日時：2018年5月25日 23時
