浅瀬を泳ぐ魚達 (ページ15)

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「すっげー綺麗だね！」

『こんなとこあるなんて知らなかった！』

今夜はライトアップされた公園でのデート

友達に教えてもらって来てみたけど
あんまり人もいないし、
ザカさんも私の手を引いて、
すごい楽しそうにしてくれてる

前に盗撮とかされたことあるって言ってたから
人が少なそうな所を選んでデートする

家で会うだけでも幸せだよ、って
ザカさんに言ったことあるんだけど

「俺がAと普通にデートしたいだけ

それに、二人で隠れスポットみたいなの
一緒に探すのも楽しいんじゃない？」

そういう答えが返ってくると思ってなかった

でも何でも楽しむっていう考えがきっと
皆染み付いてて、それが当たり前で

でもそういうことは出来ないと思ってたから
すごく嬉しかった

『ザカさん、こっちも行ってみよう！』

「おお～、花壇の中も設置されてんじゃん」

色とりどりの花が電飾に照らされていて
その花壇の間が歩けるようになっていた

『綺麗だね、ザカさん』

「そうだね、凄い綺麗」

隣を見ると、楽しそうな笑顔をしていて
私もつられて笑顔になる

でもふと視線を感じて
ザカさんの向こうに目を遣ると

私達を指差す、二人の女性

ひそひそと話している様子で
明らかにザカさんのことは気付いてる

まぁ、人目に付きたくないって言っても
オシャレさんだから目立つんだけど

でも、写真とか撮られないで
今まで何も無かったほうが奇跡なんだ

「…A？」

『あっ、なに？』

急にだんまりになった私を覗き込むザカさん

慌てて視線を彼女達から逸したけど
ザカさんには気付かれて、
そちらに視線を向けてしまった

視線を向けられた彼女達は、あっ、と言って
途端に笑顔になる

そしてこちらに駆け寄ってきた

「…あの、Fischer'sのザカオさんですよね？」

「…そうですけど」

「本物だ〜！
いつも見てます！」

お姉さん、って感じの2人は、
私の存在なんて気にも留めずに
ザカさんを見てきゃーきゃー言ってる

「今日は…企画か何かですか？」

片方の人が、私を品定めするかのように
足元から順に顔までじっくりと見てくる

「へぇ〜いいなぁ…彼女役」

もう片方の人がわざとらしく私に言ってきて
睨みつけるように冷たい目で見てくる

同じ人間としてこんな人がいるのは残念だけど

有名人と一緒にいると、こういうこともあるよね
なんて考えるようにして、苦笑いを返した

そんな臆病な私の震える手を
大きくて温かい掌が包んだ

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