ふたり。(短編集)

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△ リアル



ki .





一年の空白を埋めるみたいに


何度も何度も


愛を確かめ合うように抱き合った。



シャワーを済ませ


二人ベッドに横になれば


少し眠たげな太輔を


愛おしく見つめる俺の顔が


その瞳に映る。





・





「 俺たちってさ


織姫と彦星みたいだね。」





そう切なそうに笑うこいつを


俺は本当に幸せに出来ているのだろうか。





何も言えなくなって


華奢な腰を抱き寄せて


その肩に顔を埋めた。




・




俺たちは


デビューが決まったことをきっかけに


お互いよりも、お互いの夢を選んで


離さないようにって


何度も何度も、繋ぎ直したその手を


ゆっくりと解いた。




・



身をよじって


俺の腕から抜け出したかと思ったら


刹那、俺の頬は両手で包まれた。




・




「 宏光、俺は幸せだよ。


世界で一番、幸せ。」





曇りひとつない


迷いひとつない


その力強い目から逸らさなくて


なによりもその言葉が嬉しくて。




言葉よりも先に


溢れた想いを唇に乗せた。




小さく音を鳴らして唇を離せば


照れ笑いした君がいる。






好きは募るばかりで


溢れる想いを


一年で一度の今日だけは


めいいっぱい伝えたいのに


世界中を探しても


この気持ちを表す言葉が見つからないんだ。


それがこんなにも


もどかしいことだなんて


太輔に出会うまで


俺は知らなかったんだよ。






・





我慢して強がることを覚えさせてしまった君を


もっと甘えさせてあげたくて


幸せだって笑う君を


もっと幸せにしたくて


あの日から一人にしてしまった君の側に


これからは毎日寄り添いたくて。







・





俺の頬を包んでいた両手を解いて


起き上がって座れば


目をこすりながらも


俺の胸に寄り添うように座る太輔を抱き寄せて


その小さな左手を取り


だっさいけど、震えてしまった手で


その細い細い薬指に


"幸せの証"をゆっくりと嵌めた。

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