余計なお節介 ページ6
内心の安堵した感情を押し止めて、中身を見ることなく封筒を国見に突っ返した。
「ちゃんと返事しなきゃ、だめ」
国見は自分の胸部に押し付けられた封筒に目を細め、渋々受け取った。
私はあくまで彼女を作っていいかという問いに対して‛だめ’と言ったのであって、返事をすることに対しては何も言っていない。
そしてそれに対する返事を決めるのは私ではなく国見だ。だめと言ったのは、私の願望に過ぎないのだ。
告白を冗談として流されるのも嫌だけど、精一杯の告白に対して返事すらもらえないのはもっと嫌だ。
「でも、これ今日の放課後って書いてるし」
封筒の中を覗いた国見が怠そうに言う。
行っても遅い、その意を汲む。
相変わらずどこか足りない国見の言葉の裏側を読み取ることにはもう慣れた。
「その子、どこにいるの？」
「知らない」
面倒くさそうに呟く国見に、私が目を細めると彼は小さく息を吐いた。
「…校舎裏って、書いてたけど」
「ほら行くよ」
私が国見の腕を掴むと、掴まれた本人は驚いた顔をした。
「は、行くってなに」
そのまま掴んだ腕を無理矢理引いて、来た道を引き返す。
引いた国見の腕からは不満げな空気がビシバシと伝わってきた。
振り返らなくても、国見が今どんな顔をしているのかわかるくらい。多分眉を顰めて、口をへの字にして、そして視線は道の端。
脱力したように体重を後ろに掛けていて、お陰で足取りは重い。私がこの腕を離してしまえば、国見は体重を掛けている後方へ倒れてしまうだろう。
国見は言葉ではなく、行動で示している。
「A、いいの」
「なにが」
それほど学校から離れていないのに、異常に遠く感じられた後ろに大きな荷物を引いているせい。
「いいのって、なにが」
口を閉ざした国見に、催促を掛けるように直近二つの会話を繋げる。
国見の言いたいことはわかっている。
でも、行くつもりのなかった国見を私が無理矢理連れているのに、今更引き止めるなんてそんな無責任なことをできるわけがない。
「その子がすごく可愛かったら、俺付き合っちゃうかもしれない」
一瞬、足を止めそうになった。
ここまで来て私が止める資格はないし、引き返すこともできない。
「国見が選んだなら、私は応援する」
前頭の‛嫌だけど‛という言葉は呑み込んだ。
この時、国見が「余計なお節介」と小さく呟いた言葉が、私の耳に届くことはなかった。
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小鈴(プロフ) - 楓鈴さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけて本当に嬉しいです！パスワードはメッセージにてお送りさせていただきますのでご確認ください！ (2022年8月18日 15時) (
レス) id: ae1e2047a9 (このIDを非表示/違反報告)
楓鈴(プロフ) - 小鈴様の作品どれも面白くて一気読みしてしまいました(笑)素敵なお話、ありがとうございます。その…恋愛保護方針論の小説を読みたいです…！パスワードを教えて下さいませんか。コメント失礼しました。 (2022年8月6日 0時) (レス) id: 20d25d3656 (このIDを非表示/違反報告)
小鈴(プロフ) - 夕月さん» コメントありがとうございます！古い作品の中からわざわざ読んでいただき嬉しい限りです！パスワードはメッセージにて送らせていただきます！ (2022年7月23日 0時) (レス) id: ae1e2047a9 (このIDを非表示/違反報告)
夕月(プロフ) - こちらの作品や小鈴様の他の作品を拝見して今更ながらファンになりました。2年以上前の作品にはなりますが、「恋愛保護方針論【HQ】」も拝読したく、パスワードをお教えいただけないでしょうか。このメッセージに気付いてもらえますように。 (2022年7月21日 11時) (レス) id: 2778bc399a (このIDを非表示/違反報告)
小鈴(プロフ) - 月花さん» コメントありがとうございます！お返事遅くなってしまったので、まだ見られているかわかりませんが、パスワードをメッセージで送らせていただきますね！ (2021年11月4日 19時) (レス) id: 3ef1db8aa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小鈴
| 作成日時：2019年12月3日 22時
