フィール・シンパシー ページ37
及川が冷たくなって、早一週間。
結局お弁当も受け取ってもらえず、あの日のお弁当は花巻に食べてもらった。
そんなある日。私は机に突っ伏していた。
「テストどうだった――って、お前めっちゃ点数いいじゃん!」
前の席の花巻が私の机に散乱した答案用紙の点数に、驚きの声を上げてガタっと椅子に座り直す。
ゆっくり顔を上げると、花巻が私と自分の答案用紙を見比べては目を皿のようにしていた。
私ってそんな頭悪そう?
「お前なんで現文だけこんな点数低いんだよ?」
私は現代文が苦手だ。
いくら答えが文章中に出ているからと言え、一つに定まらない答えを探すのが苦手だった。勿論、読書に慣れていないというのもある。
でも、文章から人の心情を読み取るということが、本当に苦手だ。
「つかどうした。具合悪い?」
下腹部の引き絞られるような痛みに、私は顔を歪める。
「便秘か?」
「違う」
腹部の鈍痛のせいで腰が鉛のように重い。
所謂生理痛だ。たまにこういう重い日があって、今日はまさにそれ。
しんどい以外の言葉が見つからない。
「大丈夫か?お前今日購買だろ?俺買っ、」
言いかけた花巻が、不意に言葉を切った。
不自然に言葉の終わりを呑み込んだ花巻に、私は重い体を起こして顔を上げると、その目にはしっかりと私を映しているのに、どこか遠くを見ているような及川が机の横に立っていた。
その異様に冷たい目に、一瞬腹部の痛みが消えかけた。
席の周りにいた女子が短く嬉しい悲鳴を上げる。
そんな彼女たちに目も触れない及川は、私と花巻を順に一目したあと、わかりやすく大きくため息を吐いた。
「マッキー全然わかってないじゃん。うんこなわけないし」
そう言って及川は、ぺしっと私の机にあるものを置いた。
それは、いつも及川が私に決まってくれるもの。
「そんなこともわかんないでAと一緒にいるの?」
及川は、いつかの松川が私に向けていたような冷たい視線を花巻に向ける。
花巻はというと、やれやれとでも言うように「そういうことな」と、私の腹痛の原因を納得したようにこくこくと数回頷いた。
用が済んだらしい及川の教室を出ようとする背を呼び止めると、ほんの一瞬、足を止めた。
「ありがとう、及川」
私が勢いよく席を立つと、及川は横目でこっちを見て、私を案じてか、手のひらを床に向けて軽く落とした後‛座れ’と目で言った。
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いおり - 道徳の教科書に載ればいいのにぃ!!泣くことしか出来ませんが…凄く素敵な作品で本当に号泣しました!!1日で全部読ませて頂きましたがここまで素晴らしい小説は今までで一番だと思います!! (2020年12月9日 15時) (レス) id: 5e524467c0 (このIDを非表示/違反報告)
雅 - 本編は全て夢主目線なのに他の登場人物の感情も伝わってきて、切なくなりました。作者様の描写が繊細だからこそ、読み手にしっかり伝わるのだと思います。番外編でまた深く心情が知れて切なくなりました。特にマッキーがかなりグッときました。すごく素敵な作品でした! (2020年6月22日 9時) (レス) id: 2f4dc25fc0 (このIDを非表示/違反報告)
おかか - めっちゃ面白かったです!一人一人の言動の真意とかしっかり話が作られていて、リアルで凄いです! (2020年6月21日 9時) (レス) id: 0ecde9d0b0 (このIDを非表示/違反報告)
ルーテル(プロフ) - 今まで読んだ占ツク作品で1番好きかもしれません…1人1人の心情がリアルでぐちゃぐちゃなのに真っ直ぐな恋心がとても心地いい作品でした!マッキーの切なさが一番心に来ました…いい作品をありがとうございました! (2020年5月31日 22時) (レス) id: 98b39f25a9 (このIDを非表示/違反報告)
モンブラン♪@アップルパイも捨てがたい(プロフ) - 泣いた...岩泉夢主さん好きなのかなぁ?は勘違いか...もうカッコよすぎ...ごちそうさまですっ (2020年1月13日 12時) (レス) id: 538cc2e76e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鈴 | 作成日時:2019年10月17日 21時