その心情を証明せよ。【青葉城西】

諦めが悪くてごめんなさい。 ページ26

「なにそれ。付き合いはしないけど、好きでいてほしいって」





ずるい。及川はずるいよ。


私が自分から離れられないことを、彼はわかっている。






「俺の我儘なのは、わかってる」






…大事なのに、付き合わない？


でも、及川はずっと、どんなときでも私の味方でいてくれた。守ってくれていた。


大事にされている自覚は、勿論あった。






「及川」





さっきよりも声が震える。


鼻がツンとする。


吹き抜ける風が、私の苦しい気持ちをほんの少しでも連れて行ってくれたら、いくらか楽になるのに。







「待ってたら、なにか、変わるの…？」








私の言葉に、及川は押し黙った。


それから彼が口を開くことはなかった。


タイミングを見計らったかのように、遠くからお昼休み終了を告げるチャイムの音が聞こえる。






「…」
「…」






それでも、私の気持ちは少しも揺らぐことはなかった。


どちらとも口を開くことはない。


立ち上がった私を、及川はベンチに座ったまま見上げた。


及川の手からお弁当を受け取って、ランチバックにしまう。







「今度はちゃんと、美味しいの作ってくる」







そう言うと、やっぱり彼は寂しそうに笑った。私も、無理矢理笑顔を作った。



これは、私の精一杯の強がり。



少しでも気を抜けば、強張って崩れてしまう顔を、必死に笑顔で繕った。



及川は、なんでそんな顔をするのだろう。寂しいのは、悲しいのは、私なのに。



自分が振ったくせに、ずるいよ及川。



自分から手放そうとしているくせに。でもそうできないようにしているのは、紛れもない自分じゃない。矛盾だよ、及川。



その場にいる自分自身の存在が、苦痛そのものでしかなかった。



及川の悲しい目の色だけが、頭の中をぐるぐると回って、しばらく離れなかった。








それでも何度告白しても、


その度に断られるとしても、


私はこれから先何度でも。




及川にこの気持ちを伝えるのだろうと、そう思った。

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