不正と感謝 ページ21
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「おー、帰った帰った」
私は放課後の教室から、歩いていくクロとマミの背中を眺めていた。
マミ、上手くいくといいなぁ。
「あれ、A」
ふと名前を呼ばれ、窓の手すりに手を掛けたまま振り返ると、教室の入口には孤爪の姿があった。
「孤爪」
気配、しなかった。
クロも孤爪も、気配を消せるのか…？忍者でも目指しているのか…？
孤爪が廊下側の自分の席に手を掛け、机の中をガサゴソ漁る。
‘何しに来たんだ’という素朴な疑問を私の視線から汲んだらしい孤爪が「スマホ」と言って私に見せた。
どうやら忘れたスマホを取りに来たらしい。
「今日、クロと帰るんじゃなかったの」
猫背な彼が、机から取り出したスマホに指を滑らせて言う。
「あー、うん。ちょっと、ね」
はぐらかすように返事をして再度窓の外に視線を向けると、すでに二人の姿はなかった。
お昼休みにクロと一緒に帰る約束を取り付けた私は、マミと帰るように上手く取り持った。
適当に理由をつけるのは得意だ。伊達に猫を被っているわけじゃないのだから。
＊
「A！昨日はありがとう！」
次の日、登校してくるや否や、マミが私に駆け寄ってきた。
この様子だと、上手くいったらしい。
「昨日ね。黒尾先輩と駅前の新しくできた喫茶店に行ったんだ」
楽しそうに話すマミに、私は自然と頬が緩んだ。
このまま、上手くいってくれればいいな。
私の入る隙がないくらいに。
「やっぱりあの人思った通り紳士だね！私が車道側歩いていたら換わってくれてね」
それでね、と嬉々として話すマミに私は「よかったね」と小さく笑った。
へえ。私といる時とはまるで態度が違うらしいじゃない。
「やっぱり持つべきものは友だね〜」
そう言って私の肩に腕を回すマミに、次はどうしようか、と考えるのだった。
猫を被るようになって、相手が欲しい言動を先回りして用意することが癖になっていた。
でも、恋愛事になると話が違う。私はそういうことには滅法疎いのだ。
次に何をすれば、マミは喜んでくれるのだろう。
何をすれば、私を必要としてくれて、私から離れていかないのだろう。
面倒だと思っていることを背負いこむことは嫌だけど、友達を失ってしまうのは、もっと嫌だった。
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クロいいよね - 完結おめでとうございます とっても面白かったです！！ (2022年11月21日 22時) (
レス) @page50 id: 18092cdeea (このIDを非表示/違反報告)
ちあ。(プロフ) - コメント失礼致します。完結おめでとうございます！毎日更新楽しみにしていました。私自身、自分は流されないように頑なになりすぎていたんだな、と作品を読みながら思いました。周りに合わせることも流されないことも、両方器用にできるようになりたいって思いました！ (2019年10月14日 1時) (レス) id: 2013350887 (このIDを非表示/違反報告)
momx(プロフ) - 完結おめでとうございます！とても面白かったです。 (2019年10月13日 17時) (レス) id: 2de1bab8eb (このIDを非表示/違反報告)
ずー(プロフ) - 完結おめでとうございます！素敵だなと思う作品は小鈴さんの作品がほとんどで…。とても楽しまさせて頂きました。 (2019年10月13日 11時) (レス) id: 5f1f2e19c0 (このIDを非表示/違反報告)
usagicyanda(プロフ) - 完結おめでとうございます！丁度一年ほど前に私もこの主人公と全く同じ１つ上の人気者の先輩と付き合っていました、ほんとに全く同じ状況で涙がこぼれました..その先輩は晒すだけ晒して守ってくれませんでしたが... けど主人公ちゃんとクロが幸せになれてよかったです！ (2019年10月13日 3時) (レス) id: cef44ace1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小鈴
| 作成日時：2019年9月29日 17時
