ネコ騙し合い愛【黒尾鉄朗】

自惚れと困惑 ページ16

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「俺、」





静かに頭に乗せられたごつごつとした手に、膝に埋めた顔を上げると、クロと目が合った。








「結構、お前のこと気に入ってるんだけど？」







‛じゃなきゃ毎日こんなとこ来ねえよ’ と付け足してクロは私の頭を雑に撫でる。








「ちょ、ちょっと、髪ぐちゃぐちゃになる」

「俺は応援しるんですけど？」








朝折角綺麗に整えてきた髪が台無しになる。


クロのがっちりとした、たくましい腕を押しやる。


バレーやってたら、こんなに筋肉がつくの？


孤爪はあんなにひょろひょろしてて弱そうなのに？
ボールに負けそうな腕してるのに？私より細いのに？








「クロ、私のこと好きとか言わないよね」








これは少し、自意識過剰だろうか。
いやでもこんなに可愛い女の子が目の前にいて、好きにならないほうがおかしいよね。
自慢じゃないけど、告白だってそれなりにされているわけだし。







「お前は、どうなんだよ」







まぁ、こんな性格の悪い女なんて、ねえ？
私だったらこっちから願い下げだね。


それに猫を被っている自分の方が好かれる自信がある。


でもそんな自分を好かれても、困る。


それでも。もし。もしも、好きって言われたら、どうするんだろう。








「…絶対ない」
「今、間あったな」
「ない」
「あった」
「ないし」







待て待て待て。私は何を考えているんだ。


こんなの、私らしくもない。


もっとドンと構えてるのが私でしょうが。


顔には自信あるんだもん。




でも待って。



これじゃあ、まるで。








「…そうかよ」







まるで。








「んじゃ、また明日な」








―――まるで、クロのことが好きみたいじゃない。









「猫被りちゃん」








こんな、胡散臭い男なんて、好きにならない。









「その呼び方やめて」









私の頭に再度ポンポンと手を乗せて、立ち去るクロの表情が少しだけ曇って見えたのは、気のせいだろうか。









「あれ、クロの返事聞いてないや」








頬に血液が集まるのを感じた。









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